2010 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症発症機転におけるRho/ROCK系シグナル制御機構の検討
Project/Area Number |
22590900
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宇都宮 一典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50185047)
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Keywords | diabetic nephropathy / Rho / Rho-kinase |
Research Abstract |
平成22年度は、研究実施計画書に則り、in vitroの研究を行った。不死化したマウスメサンギウム細胞ならびにラット由来株化尿細管細胞を用い、RhoならびにRho-kinase(ROCK)の活性化条件を検討した。まず、高血糖の影響を確認する目的で、両細胞を高ブドウ糖培地で培養し、Rho/ROCKシグナルを検討したが、どのような条件設定を行っても、両細胞ともにRho/ROCKシグナルの有意な活性化を認めることはできなかった。そこで、近年、糖尿病ならびにインスリン抵抗性状態における血管病変への関与が注目されているTNF-αならびsphingosine-1-phosphate(S-1-P)の影響を検討したところ、これらがRho/ROCKの著しい活性化をもたらすことを見出した。次にメサンギウム細胞において、TNF-αの刺激下に発現する遺伝子を検討し、MCP-1とTGF-βの発現が数倍の亢進をきたし、ROCK阻害薬でこれが抑制されることを確認した。併せて、chemotaxis chamberを用い、TNF-α刺激下のメサンギウム細胞培養液がマクロファージの遊走を促進し、ROCK阻害薬がこれを抑制することを確認した。さらに、ROCKによるMCP-1の発現誘導には、p38MAPKが関与することを立証した。この結果から、メサンギウム細胞におけるRho/ROCK系の活性化は、糸球体におけるマクロファージの浸潤を促すと結論した。一方、尿細管細胞にS-1-Pを添加すると、Rho/ROCK活性化とともにE-cadherinの発現が低下し、α-SMA陽性細胞が増加することを見出した。また、この作用はS-1-Pの2型受容体を介することを確認した。このことから、S-1-PによるRho/ROCK系の活性化は、尿細管における形質転換(epithelial to mesenchymal transition, EMT)をきたすことが示された。以上の結果から、Rho/ROCK系シグナルは、炎症機転とEMT促進を通して、腎症発症に関与すると考えられた。
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Research Products
(22 results)