2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病性腎症発症機転におけるRho/ROCK系シグナル制御機構の検討
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22590900
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宇都宮 一典 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50185047)
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Keywords | diabettic nephropathy / Rho / Rho-kinase |
Research Abstract |
平成23年度は、研究実施計画書に則り、2型糖尿病モデルdb/dbマウスを用いて、腎皮質におけるRho/Rhoキナーゼシグナルの動態と腎病変との関係について検討を行った。本マウスでは、糖尿病の発症ともに、腎皮質のGTP結合型Rhoの有意の増加を認めた。また、Rhoキナーゼ活性も有意に増加しており、その特異的阻害薬ファスジルの投与によってこれは抑制された。糖尿病の発症とともに尿蛋白が増加するが、ファスジルの投与はこれを有意に抑制した。糖尿病マウスでは糸球体係蹄の肥大・基質の増加などの形態変化を示したが、ファスジルの投与によってこれらの変化は改善した。また、糖尿病の糸球体ではマクロファージの浸潤を認めたが、ファスジルはこれを減少させた。そこで、線維化を促進するサイトカインTGF-β、CTGFならびにマクロファージの浸潤をうながすMCP-1の発現を検討したところ、糖尿病ではこれらのmRNAが増加していた。また、細胞外基質である各種コラーゲンのmRNAも糖尿病で発現の亢進を認めたが、ファスジルの投与によって、これらのサイトカインやコラーゲンの発現は有意に抑制された、CTGFやMCP-1は、低酸素状態で活性化を受ける転写因子HIF-1によって転写制御されることが知られている。そこで、糖尿病マウスの腎皮質におけるHIF-1α蛋白の変動を検討した。糖尿病マウスでは、非糖尿病マウスに較べ、腎皮質HIF-1α蛋白量は有意の増加しており、核分画でも発現量の増加を認めた。ファスジルの投与によって、HIF-1αの核内蛋白量は、減少していた。以上の結果から、糖尿病では、腎皮質におけるHIF-1の産生増加とともに核内への移行促進を生じ、その下流遺伝子の発現亢進をきたすこと、Rhoキナーゼはその上流に位置し、HIF-1を介した糖尿病性腎症の発症機序に重要な役割を演じるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞レベルで得られた知見について、糖尿病マウスの腎臓でほぼ想定通り確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験結果からみると、糖尿病性腎症の成因においてRho/Rhoキナーゼシグナルはかなり大きな役割を演じていると考えられる。その活性化機構ならびに制御する遺伝子は多岐におよぶ可能性かある。今後の研究成果を踏まえ、何らかの網羅的探索が必要になると想定される。また、研究の進捗によっては、遺伝子改変マウスによる実験が必要となると考えている。
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