2011 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的発現遺伝子解析により抽出された高血圧関連遺伝子AT4/IRAPの役割
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22590909
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
此下 忠志 福井大学, 医学部, 准教授 (40270954)
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Keywords | レニン-アンジオテンシン系 / 網羅的発現遺伝子解析 / AT4/IRAP / 高血圧 / 糖尿病 / 腎臓 / インスリン / アミノペプチダーゼ |
Research Abstract |
これまで申請者は腎組織を用いたトランスクリプトームの網羅的解析を行い高血圧や糖尿病などで特異的に発現低下を示す遺伝子クラスターを抽出した。そのGene Ontology解析とPathway解析によりアンジオテンシンII消去系遺伝子群であるNLN、ENPEP、ANPEP、Cqorf3、ACE2、AT4/IRAP等が抽出された。腎疾患の進展にレニン-アンジオテンシン系(RAS)が重要な役割を担っていることはよく知られているが、この方法で抽出されたAT4/IPAP(アンジオテンンII4型受容体、別名、インスリン調節性アミノペプチダーゼ、insulin regulate daminopeptidase)の役割は明らかでない。そこでこの組織発現をより詳細に評価し、また血中や尿中の濃度測定法を開発し、疾患進展における役割を明らかとし、バイオマーカーや治療ターゲットとしての可能性を評価することを目的としている。 平成22年度末までで、RT-PCRによる評価で特に発現量の変化が示唆されたAT4/IRAPについて、遺伝子の構造から可溶性成分のあることが想定されていることから、約800アミノ酸配列分のSoluble Formに対して3か所の抗体作製イデオタイプ部位を各19残基で設定し抗体を作成した。6通りの組み合わせによるサンドイッチ法によるELISA系の確立を試み、ELISAによる測定系がほぼ完成していた。 当該年度は予定通りに、この二抗体法によるELISAの測定系としてのキットを作製し、プレートリーダーによる実際の測定で、極めて精度の高い測定が可能であることを確認した。duplicate sampleでのCV値を評価し、十分低値であることが確認しえた。また測定感度にかかる検体について、別の回での測定間の相関も悪くないと考えられた。しかしこれまでの測定の結果からは、実際の血漿での濃度はかなり低めであることが想定されたため、一次抗体反応時間、二次抗体反応時間、発色反応時間、反応温度、検量線段階希釈濃度などについて様々な組み合わせを試み、測定法の十分な適正化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに、(1)トランスクリプトームの網羅的解析により得られた遺伝子群についてRT-PCRによる解析を完了し、(2)マーカー遺伝子候補のAT4/IPAPに対する抗体を作製し、ELISAによる測定系の確立にほぼ成功し、(3)これをキット化し、測定の再現性などの評価を行い、(4)一次抗体反応時間、二次抗体反応時間、発色反応時間、反応温度、検量線段階希釈濃度などについて測定法の十分な適正化を進め得たと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに血液、尿などのサンプルの収集、データベースの整備を進めるとともに、測定法の適正化を一定の段階で終了とし、実際の症例について1,000例規模での測定を進め、高血圧、糖尿病、高脂血症、慢性腎臓病などの臨床例における測定と解析を通して、今回のキットによる測定でバイオマーカーとしての評価に一定の結論にまで至らせる。成績により臨床的に有意義な測定である可能性等により、今後モノクローナル抗体法によるさらなる測定法開発などの必要性など評価する。
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