2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性症における脳内鉄サイクルの制御・調節障害のメタロミクス研究
Project/Area Number |
22590926
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
宮嶋 裕明 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90221613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 智 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (40397386)
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Keywords | セルロプラスミン / ヘプシジン / フェロポルチン / 鉄 / 無セルロプラスミン血症 / 肝細胞 / アストロサイト / 封入体 |
Research Abstract |
細胞から鉄が放出される場合、2価鉄が細胞膜に存在するフェロポルチンのトランスポーター作用により細胞内から細胞外へ輸送され、これがトランスフェリンに結合するメカニズムの解明を行った。従来はセルロプラスミンの鉄酸化作用により2価鉄が3価鉄に酸化されることは分かっていたが、実際に細胞表面においてGPI結合型セルロプラスミンがその役割を果たしているのか、また、フェロポルチンに結合して細胞内での分解を促進することにより細胞からの鉄放出を抑制しているヘプシジンとフェロポルチン、セルロプラスミンの相互作用はどのようになっているのかは不明であった。今回は、これらについて培養細胞を用いて検討した。 その結果、GPI結合型セルロプラスミンが細胞内から輸送された2価鉄を酸化し、鉄のトランスフェリンへの結合を促進していることを明らかにした。また、GPI結合型セルロプラスミンが細胞膜に存在しないとフェロポルチンの安定性が低下し、容易に分解されることが明らかになった。臨床的には、全身組織の鉄過剰症である無セルロプラスミン血症の血中ヘプシジンは減少しており、フェロポルチンの分解は抑制されていることになる。しかし、セルロプラスミンがないことでフェロポルチンは安定して細胞膜に存在できずに蛋白発現早期に分解されていることを患者の肝組織細胞で証明した。これにより、無セルロプラスミン血症の細胞内への鉄蓄積メカニズムが明らかになった。更に、患者脳でもフェロポルチンの安定性は障害されており、正常ではGPI結合型セルロプラスミンが存在するアストロサイトに過剰な鉄が沈着する機序が明らかになった。この沈着鉄はアストロサイト内で封入体を形成し、これが細胞傷害を惹起する要因のひとつであると考えられた。
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