2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳梗塞後の神経再生における脳血管ペリサイトの機能に関する研究
Project/Area Number |
22590937
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鴨打 正浩 九州大学, 大学病院, 助教 (80346783)
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Keywords | 脳血管 / 神経再生 / 脳梗塞 / ペリサイト |
Research Abstract |
脳血管ペリサイトは脳微小血管周囲に存在し、血管新生、血液脳関門、微小循環調節に重要な役割を果たしている。近年、脳血管ペリサイトが多能性を有することが明らかとなり注目を集めている。本研究は、細胞外環境が脳血管ペリサイトにおいて惹起する細胞応答、シグナル伝達について検討した。1)細胞外pHおよびNa濃度の低下は、脳血管ペリサイトにおいてNa/H exchanger 1 (NHE1)を逆回転モードで活性化し、細胞内Ca貯蔵部位よりCaを周期的に放出させた(Ca oscillation)。このCa oscillationは、時間依存性にカルモジュリンキナーゼ(CAMK)IIをリン酸化するとともに、CREB (Ser133)のリン酸化を起こした。ルシフェラーゼアッセイでは、細胞外アシドーシスによるCRE依存性の転写活性の増加を認めた。NHE1の発現を、RNAiを用いて抑制すると転写活性も抑制されたことから、NHE1を介したシグナル伝達経路であると考えられた。活性化したCREBは核内に移行し、種々のCREB標的遺伝子を含む様々な遺伝子を発現させた。細胞外アシドーシス刺激により調節される遺伝子群をマイクロアレイにて検討すると、CREBシグナル下流の蛋白が発現していた。2)脳血管ペリサイトを低酸素状態に暴露すると454遺伝子が2倍以上の発現上昇を示し、519遺伝子が半分以下に低下した。Glycolysis、angiogenesis、epidermal cell differentiation、cell growth、cytokine activity、inflammatory responseなどにかかわるGO termが有意に抽出された。パスウェイ解析では解糖・糖新生、サイトカイン・免疫反応にかかわる経路が有意な変化を示し、ペリサイトはこれらの遺伝子発現を介して脳内環境を調節している可能性が示唆された。3)脳虚血時の脳血管ペリサイトの動態を観察するために、ラット中大脳動脈閉塞モデルにおける脳血管ペリサイトをPDGFR-β、NG2、desminにより染色すると、脳血管ペリサイトは梗塞巣周辺組織の毛細血管周囲に時間依存性に高度に集族した。脳血管ペリサイトは、脳虚血時の細胞外環境に応じて、種々の細胞応答を起こし、微小環境を制御している可能性が示唆された。
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