2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア病治療を目的としたミトコンドリア内での外来遺伝子発現の基礎的研究
Project/Area Number |
22590949
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
松島 雄一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第二部, 流動研究員 (20571342)
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Keywords | ミトコンドリア病 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
ミトコンドリアDNA(mtDNA)に変異を持つミトコンドリア病患者の細胞内では正常なmtDNAと変異mtDNAが混在し、変異ミトコンドリアの割合が閾値を超えると機能障害を生じ発病に至ると考えられている。もし患者のミトコンドリア内において変異部位に対応する野生型遺伝子を発現させ野生型遺伝子産物を相対的に優位に立たせることができれば、ミトコンドリア病に対する遺伝子治療法となりうる可能性がある。そこで本研究はミトコンドリア病に対する遺伝子治療法開発に向けた第一歩として、外来遺伝子をミトコンドリア内に導入・発現させる基礎情報の獲得を目的とする。またmtDNAの発現に関しては未だ不明な点も多いことから、mtDNAの発現に関する基礎的研究も行いその成果を外来遺伝子の発現に応用する。 当該年度では、パッケージング因子の選択を行った。ミトコンドリアへの遺伝子導入のためには導入するDNAを安定的にミトコンドリアへ送達するとともに、ミトコンドリア内でのDNA分解に耐えさらにこのDNAが転写されることで外来遺伝子を発現させる必要がある。そこでDNAのパッケージング因子としてミトコンドリアDNA結合タンパク質TFAMを選択し解析を行った。組み換え大腸菌から調製したヒトTFAMタンパク質を実験に用い以下のことを明らかにした。(1)TFAM/DNA複合体は電荷の置換や限外ろ過のような物理的な力で容易に乖離しないこと(2)TFAM/DNA複合体は通常DNAの転写に悪影響を与えないが、TFAMがDNAに対し大過剰となる条件では転写阻害を引き起こすこと。 以上の結果はTFAMがミトコンドリアへの遺伝子導入時の適切なDNAパッケージング因子であることが期待されることを示している。またパッケージング因子として用いる際にはTFAMとDNAの比率を考慮して用いなければならないことも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
外来遺伝子をミトコンドリア内に導入・発現させるためのベクター構築や、導入DNA複合体に対するパッケージング因子の選定や評価についてはほぼ当初の目的通り進んでいるが、最終目標である細胞内ミトコンドリアへの遺伝子導入・発現を行うための実験方法の確立が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに導入すべき遺伝子やパッケージング因子などの材料の選定を行った。今後はこのパッケージング因子の詳細な評価を行う必要がある。また最終目標である細胞内への効率的な遺伝子導入・発現の成功には至っておらずミトコンドリアへの効率的な遺伝子導入方法の構築などの越えるべきいくつかのハードルが存在することも明らかとなった。今後は、これらの課題の克服に向けた研究行う必要がある。
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