2011 Fiscal Year Annual Research Report
βセクレターゼの機能制御に基づくアルツハイマー認知症の新治療法開発に向けた研究
Project/Area Number |
22590951
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
荒木 亘 (財)国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第六部, 室長 (60311429)
|
Keywords | アルツハイマー病 / 認知症 / βセクレターゼ / アミロイド / 脂質ラフト |
Research Abstract |
神経細胞におけるβセクレターゼ(BACE1)と脂質ラフトの関連性、BACE1の関連タンパクによる制御に関する研究、およびBACE1活性の阻害作用を持つ低分子化合物の探索研究を継続した。主な成果は以下のようである。(i)初代培養神経細胞にBACE1(野生型、パルミトイル化欠損変異型)、APPを組換えアデノウイルスを用いて過剰発現させた場合、APPのβ末断片は主に脂質ラフト外に分布していた。βアミロイドタンパクの分泌量はBACE1の脂質ラフト局在に依存しないという結果と合わせ、APPのβ切断は脂質ラフト外で主におこることが示唆された。この知見に基づき、神経細胞におけるβアミロイド産生の動的モデルを提唱した。(ii)BACE1の2量体形成にはパルミトイル化が関与しないことを示した。(iii)LRP1(LDL receptor-related protein1)と同等の性質を持つ短縮型LRP-L4がBACE1と相互作用し、BACE1発現の抑制作用を持つことが示された。BACE1の脂質ラフト移行はLRP1の有無により影響を受けなかった。現在、LRP1によるBACE1発現抑制機序の解析を進めている。(iv)研究協力者(理研斎藤臣雄博士)から提供された化合物ライブラリーを用いて、H22年度とは異なる方法でBACE1阻害作用を持つ低分子化合物のスクリーニング実験を行い、複数個の陽性化合物(BACE1阻害化合物候補物質)が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの期間に、βセクレターゼ(BACE1)の脂質ラフト移行メカニズム、BACE1の脂質ラフト局在とβアミロイド生成の関連を明らかにし,論文発表を達成できた.LRP1によるBACE1の制御に関する新知見を得た。さらに、BACE1阻害作用を持つ低分子化合物のスクリーニングを実施し、複数個の陽性化合物を得ることに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
BACE1関連分子であるLRP1に焦点を当てて、BACE1の機能制御メカニズムを解明するとともに、脂質ラフト外におけるBACE1の制御についても検討する。これまでに得られたBACE1阻害化合物候補物質について、それらの生物学的効果を培養細胞系を用いて検証する。さらに、共同研究機関と協力し、効力の高い新規BACE1阻害化合物への展開を実現する。
|