2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22590965
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 彰一 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (40119962)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 運動ニューロン疾患 / AMPA受容体 / GluA2 / RNA 編集 / コンデショナルADAR2ノックアウトマウス / 核内空胞変化 / 病理 |
Research Abstract |
【目的】孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脊髄運動ニューロンでは、adenosine deaminase acting on RNA type2 (ADAR2)活性低下により、AMPA受容体のサブユニットであるGluA2の未編集が起こり、AMPA受容体のCa2+透過性が亢進し、神経細胞死が生じると考えられている。孤発性ALSのモデルマウスであるコンディショナルADAR2ノックアウトマウスの脊髄を電顕で観察し、運動神経細胞死の病態機序を検討する。 【方法】ホモ接合体ADAR2ノックアウトマウス(AR2)(15週、n=2、140週、n=2)、ヘテロ接合体ADAR2ノックアウトマウス(AR2H)(14週、n=2、17週、n=2)および対照マウス(12週、15週、16週、74週、140週、それぞれn=2)の頸髄を光顕と電顕で観察した。 【結果】トルイジンブルー染色を施したplastic 切片での光顕的観察では、AR2(15週)とAR2H(14週、17週)で、ときに神経細胞の単純性萎縮とグリオージスがみられた。AR2H(74週)とAR2(140週)では、主に運動ニューロンに空胞変性が認められた。電顕では、AR2(15週)で電子密度の高い膜性構造物が、運動ニューロンの細胞質のほか、軸索内で観察された。AR2H(14週、17週)では、ときに萎縮した運動ニューロンが散見された。AR2H(74週)およびAR2(140週)では、空胞変性が主に運動ニューロンの核内に、ときに細胞質に認められた。アストロサイトやオリゴデンドロサイトの核内にも、しばしば空胞変性がみられた。 【結論】コンディショナルADAR2ノックアウトマウスでは、運動ニューロンとグリア細胞の主に核内に空胞変性がみられ、カルシウム透過性AMPA受容体を介した興奮毒性が運動ニューロンおよびグリア細胞の細胞死に関与しているものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究目標は、孤発性ALSのモデルマウスであるコンディショナルADAR2ノックアウトマウス、すなわちホモ接合体ADAR2ノックアウトマウス(AR2)とヘテロ接合体ADAR2ノックアウトマウス(AR2H)、および対照マウスの頸髄を光顕と電顕で観察し、運動神経細胞死の病態機序を解明することである。 光顕的観察では、前発症期(AR2H:14週、17週)と発症期初期(AR2:15週)で、ときに神経細胞の単純性萎縮とグリオージスがみられた。また、発症期前期(AR2H:74週)と発症期後期(AR2:140週)では、主に運動ニューロンに空胞変性が認められた。電顕的観察では、前発症期(AR2H:14週、17週)で、ときに萎縮した運動ニューロンが散見された。発症期前期(AR2:15週)では、電子密度の高い膜性構造物が、運動ニューロンの細胞質でみられた。発症期前期(AR2H:74週)および発症期後期(AR2:140週)では、空胞変性が主に運動ニューロンの核内に、ときに細胞質に認められた。同様に、アストロサイトやオリゴデンドロサイトでは主に核内に、しばしば空胞変性がみられた。 コンディショナルADAR2ノックアウトマウスの運動ニューロンとグリア細胞の核内空胞変性は、カルシウム透過性AMPA受容体を介した興奮毒性が関与していることを示唆する、従来報告のないuniqueな所見であり、第22回International Symposium on ALS/MND(Sydney)で発表した。 以上のことから、本研究は、本研究課題の当初研究目的をほぼ達成していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
孤発性ALSのモデルマウスであるコンディショナルADAR2ノックアウトマウスおけるオートファジーの関与に関しては、いまだよく分かっていない。今後、コンディショナルADAR2ノックアウトマウス、すなわちホモ接合体ADAR2ノックアウトマウス(AR2)とヘテロ接合体ADAR2ノックアウトマウス(AR2H)、および対照マウスの頸髄を観察し、脊髄前角細胞の変性過程にオートファジーが関与しているかどうかを明らかにする。 方法として、前発症期(AR2H:14週、17週)、発症期前期(AR2:15週、AR2H:74週)、発症期後期(AR2:140週)および対照マウス(12週、15週、16週、74週、140週)の頸髄を光顕、電顕およびwestern blot法で検索する。 おそらく、コンディショナルADAR2ノックアウトマウスの脊髄前角細胞の変性過程にオートファジーが関与しているものと思われる。
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Research Products
(7 results)