2010 Fiscal Year Annual Research Report
紀伊筋萎縮性側索硬化症における金属イオンと酸化的ストレス障害
Project/Area Number |
22590967
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Research Institution | Kansai University of Health Sciences |
Principal Investigator |
紀平 為子 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (30225015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 宗平 関西医療大学, 保健医療学部, 教授 (30166954)
岡本 和士 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (60148319)
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Keywords | 紀伊ALS / カルシウム欠乏 / 酸化的ストレス / 飲用水 / 発症頻度 |
Research Abstract |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、原因不明の上位下位運動ニューロンを傷害する変性疾患である。紀伊半島の和歌山県牟呂地方では、1950年代から継続的に紀伊ALSの多発が報告されている。ALSは殆どが弧発性であるが、5-10%が家族性でありSOD1遺伝子異常等が明らかにされている。一方、弧発性ALSでは、遺伝的素因に環境要因が重畳し変性を来すと推察されている。紀伊ALSでは既報の遺伝子異常は現時点で否定され、環境要因の関与がより大きいと推察される。また、Guam島でのALS多発が現在では消失したことは、病態に環境要因の関与を強く示唆するものである。我々は1960年から2000年まで発症が無かった牟呂地方大島地区に最近新たに発症を認めたことに注目し、平成22年度の本研究を以下の通り行った。 1) 牟呂地区、特に紀伊大島地区における疫学調査 2) 牟呂地区、特に大島地区の飲用水中、河川水、井戸水の元素分析 3) 大島地区住民の血清元素分析 4) Ca代謝障害を検討するためCa-sensing receptor (CaSR)抗体による患者脊髄組織の免疫染色を実施した。結果として以下の点が明らかになった。 1) 古座・古座川・串本地域の2000年-2009年の年平均粗発症率6.42/100,000人、大島地区25.5/100,000人で、日本の他地域に比して高値であった。 2) 大島、古座川・古座・串本の水道水Ca濃度は対照に比し低値(約1/4)であった。 3) 大島地区住民の血清元素分析では、CaとZnが対照に比し有意な低値を示した。 4) 大島のALS剖検例において、CaSR免疫染色で強い陽性を示す脊髄神経細胞を認めた。 大島地区では、最近になって飲用水中Caが牟呂地方同様低値となったことが特徴であり、慢性Ca欠乏による血清Ca/Zn低値、相対的なCu高値による酸化的ストレス障害が考えられた。
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Research Products
(4 results)