2012 Fiscal Year Annual Research Report
グルコースによる時計遺伝子発現調節機構に注目した代謝異常症候群予防法の開発
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22590973
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
飯塚 勝美 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (40431712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 幸男 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (10323370)
武田 純 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40270855)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ChREBP / PPARα / 脂肪合成 / 脂肪分解 / 褐色脂肪細胞 / 概日リズム / ChREBP標的遺伝子 |
Research Abstract |
本年度は以下の2点を明らかにした ①褐色脂肪組織におけるChREBPとPPARαの機能連関 脂肪合成系に関与する転写因子であるChREBP は、脂肪分解に関与する転写因子であるPPARαと同様に時計遺伝子発現調節に関与する。両者は褐色脂肪組織(BAT)で発現が高いことから、BATにおける両者の機能比較を試みた。BATでのChREBP標的遺伝子(FasnやChrebpb)の発現比較を行なったところ、絶食下に比べ自由摂食下では、FasnやChrebpbのmRNA発現低下が、Ppara mRNA発現増加が見られた。また、褐色脂肪細胞株HB2細胞では、グルコース濃度依存的にChrebpbとFasn mRNA発現増加、Ppara mRNA発現低下が見られた。さらにChREBPの過剰発現HB2細胞遺伝子発現解析、ChREBP-/- mouseのBATの遺伝子発現解析解析、ChREBP結合配列とPPAR応答配列を用いたreporter assayからChREBPによるPPARα転写活性抑制が明らかとなった。逆に、PPARα活性化剤であるWy14643の添加実験により、PPARαによるChREBP転写活性抑制が示された。以上からBATにおいてChREBPとPPARαが互いの機能を抑制することにより、摂食時には脂肪合成へ、絶食時には脂肪分解へと調節する事が明らかになった。 ②グルコースによるインクレチン(GLP-1およびGIP)受容体の発現抑制 膵β細胞株INS-1細胞と初代培養ラット肝細胞において、グルコース刺激およびChREBPの過剰発現によりGLP-1 receptorおよびGIP receptor mRNAの発現量が低下する事を明らかにした。また、両者のプロモーター領域を含むレポーターベクターを作製し、グルコースにより抑制される候補領域を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ChREBPノックアウトマウスの繁殖に時間がかかったため、ChREBPノックアウトマウスを用いて行なう実験に遅れが生じたが(現在は順調に繁殖している)、計画全体は順調に推移している。これまでの研究で明らかにする事が出来た点は以下の3点である。 ①ChREBPとその標的転写因子群(時計遺伝子関連転写因子であるKLF10,PPARα)との機能連関を分子レベルで明らかにする事が出来たこと ②概日周期を示す液性因子の受容体であるグルカゴン受容体やインクレチン受容体とChREBPの関連を明らかにする事が出来たこと ③ChREBPの機能調節機構をリン酸化/脱リン酸化、分子内修飾、フィードフォワード機構、フィードバック機構の4ステップに再分類することができたことである。 従来のChREBP活性調節にはリン酸化/脱リン酸化および分子内の機能ドメインが関与する事が知られていたが、本研究の成果によりChREBPの機能調節には、上記2つの経路に加えてChREBPとChREBP標的遺伝子産物間の機能調節機構が関与するを世界に先駆けて明らかにした。この調節様式は時計遺伝子間の機能調節でもみられるものであり、転写因子間に複雑なネットワークが存在する事が改めて示唆された。代謝と概日リズムの間には密接な関連がある事が指摘されているが(朝食欠食と肥満、朝食欠食とグルコースに対するインスリン分泌反応、夜食と空腹時血糖の上昇など)、本研究により代謝と概日リズムの間の分子機構の一端が明らかにされつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ChREBPノックアウトマウスの繁殖に時間がかかったものの、現在では順調にマウスの繁殖が行なえており、実験に用いるのに十分な数が確保できるようになった。従って、今後の実験計画には影響がないと思われる。次年度が最終年度のため、同マウスを用いて、生体におけるChREBPの概日リズム形成における寄与を生体レベルで明らかにしていく。具体的には野生型をコントロールとして、ChREBPノックアウトマウスにおける血清パラメーターの経時的な測定(8:00,14:00, 20:00, 2:00, 8:00の計5ポイントに採血を行ない、血糖、インスリンに加えて、レプチンやコルチゾールなどを測定する)および末梢組織(肝臓、白色および褐色脂肪組織)での時計遺伝子およびChREBP標的遺伝子の発現レベルを経時的8:00,14:00, 20:00, 2:00, 8:00の計5ポイント)に定量的PCR法を用いて検討する。さらには活動量変化、酸素消費量などの測定も可能であれば行なう。また、本計画で明らかにされたChREBP標的遺伝子(PPARα、KLF10、DEC1など)発現アデノウイルスを感染させたマウスを用いて、血清パラメーター(概日リズムを形成するレプチンやコルチゾールなど)の経時的な測定および末梢組織(肝臓、白色および褐色脂肪組織)での時計遺伝子およびChREBP標的遺伝子の発現変化を経時的に定量的PCR法を用いて検討する。
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Research Products
(13 results)