2011 Fiscal Year Annual Research Report
TNFα変換酵素を介したインスリン抵抗性発現機序の解析
Project/Area Number |
22590987
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
本島 寛之 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40398201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 龍也 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (70398204)
松村 剛 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (20398192)
西川 武志 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 特任准教授 (70336212)
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Keywords | 糖尿病 / 発現制御 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 蛋白質 |
Research Abstract |
本研究は、高グルコース状態がTNFα変換酵素(TACE)や他のプロテアーゼ活性を増加させインスリン受容体(IR)を切断するという仮説を、in vitroおよびin vivo実験にて証明、TACE活性抑制機序を応用した糖尿病新規治療法の確立を目的としている。 1、高グルコース培養HepG2細胞ではIR切断量が増加するが、インスリン前処置によりIR切断が減少した。一方、PKC阻害薬およびJNK阻害薬の前処置によりIR切断は部分的に抑制され、TACE発現および活性抑制が観察された。さらに、TNFα刺激により3T3-L1脂肪細胞のTACE発現および活性が上昇した。 2、C57BL/6マウスにおいて、3ヶ月間の高脂肪・高スクロース食は、通常食と高脂肪食単独より強力にTACE発現および活性を増加させた。IR蛋白発現は、βサブユニットがわずかに減少、αサブユニットはさらに減少していた。発現量の比(IRα/IRβ)は高脂肪・高スクロース食にて減少した。 3、2型糖尿病モデルKKAyマウスでは、内蔵脂肪組織におけるTACE蛋白発現が増強しているが、PKC阻害薬およびJNK阻害薬の短期処置にて減少した。 4、野生型および抑制型TACE発現ベクター構築のためのTACE cDNAを3T3-L1脂肪細胞から単離、シャトルベクターにサブクローニングした。 5、糖尿病動物をインスリン治療するとIR切断が減少した。 以上の結果から、糖尿病状態では動物および培養細胞レベルでIR蛋白切断が増加すること、インスリン治療がIR蛋白切断を抑制すること、TACE発現がPKC経路およびJNK経路を介して正に制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野生型および抑制型TACEをin vitroおよびin vivoで強制発現させるためのアデノウイルスベクター構築が遅れている。培養細胞Raw細胞から抽出したRNAをもとに、RT-PCR法にてTACE cDNAを単離していたが、シークエンスでTACEとは異なる遺伝子産物であることが判明した。現在、TACE cDNAを3T3-L1脂肪細胞から単離、シークエンスによる確認後にシャトルベクターへサブクローニングした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)3T3-L1細胞およびマウス内臓脂肪組織におけるTACE発現調節および活性調節機序に関して論文を作製中である。脂肪細胞におけるTACE活性調節機構は明らかにされていない。 (2)上記の11.で記載したように、TACEのインスリン抵抗性における重要性を分子生物学的手法により証明するためには、野生型および抑制型TACE発現アデノウイルスベクター構築は不可欠であるため、DNA組換え実験に従事する実験実施者を増加させている。 (3)臓器特異的TACEトランスジェニックマウス構築においても、野生型および抑制型TACEを使用する。特に脂肪組織特異的なトランスジェニックマウス作製を優先する。 (4)本邦のグループがTACEのコンディショナルノックアウトマウスを作製しているため、当該マウスの入手も検討する。 上記の(1)~(4)を達成し、IRの切断、TACE活性制御、インスリン抵抗性の関係を明らかとする。
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