2011 Fiscal Year Annual Research Report
膵ベータ細胞オートファジーにおける亜鉛トランスポーターの役割の解明
Project/Area Number |
22590996
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
藤谷 与士夫 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30433783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿田 裕孝 順天堂大学, 医学部, 教授 (60343480)
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Keywords | 糖尿病 / 膵ベータ細胞 / 亜鉛トランスポーター / オートファジー |
Research Abstract |
(平成23年度の研究実績) (1)オートファジーの活性化における、亜鉛イオンのはたらきに関する解析を研究計画に沿って行なったが、亜鉛イオンの積極的な関与を見出すことは出来なかった。 (2)2型糖尿病の疾患感受性遺伝子として知られるSLC30A8の機能解析を行なった。SLC30A8は、細胞質からインスリン分泌顆粒の内側に亜鉛イオンを転送するZinc transporter 8(ZnT8)をコードする。インスリン分泌顆粒内には高濃度(100mM)の亜鉛イオンを含むことが知られているが、その生理学的意義についてはなお不明点が多い。我々はZnT8の機能解析を行う目的で、膵β細胞特異的ZnT8欠損マウスを作製した。ZnT8KOマウスは6週令以降でコントロールマウスに比し、耐糖能の低下を認めた。これに対応して糖負荷時の末梢血インスリンレベルはZnT8欠損マウスにおいて低値を示した。しかしながら、単離膵島からのブドウ糖応答性インスリン分泌はZnT8欠損マウスにおいてコントロールマウスよりも高値を示し、両者で逆の結果を得た。この変異マウスのインスリン代謝異常について、詳細に解析をすすめたところ、以下のことが明らかとなった。ZnT8欠損マウスでは(1)膵β細胞からのインスリン分泌が亢進していること、(2)肝でのインスリンクリアランスが食後に抑制されないことが示され、これらはともにβ細胞からの亜鉛イオンの分泌低下に起因していることを明らかとした。このようにSLC30A8の異常では、糖負荷後(食後)にβ細胞からのインスリン分泌は増加しているにもかかわらず、肝臓におけるインスリンクリアランスを抑制できないために、末梢組織へとむかうインスリンレベルを高く維持できず、耐糖能障害を引き起こすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートファジーの誘導における亜鉛トランスポーターの機能解析に関しては、本年度の研究においてはほとんど進展が見られなかった。しかしながら、ZnT8の膵β細胞特異的欠損マウスの解析において、膵β細胞からのZnT8依存的な亜鉛分泌が、肝臓においてインスリンの代謝を抑制するという、きわめて新規性に富む結果を得た。現在そのメカニズムと意義について研究を押し進めており、本来の研究計画とは少し異なっているものの、当初の予想を超えた興味深い研究展開が現在みられている。これらの実験結果をもとに、その分子メカニズムの解明に現在取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、平成23年度の研究を通じてSLC30A8/ZnT8の機能について新しい可能性を見出した。そこで、平成24年度は研究計画を若干変更して、ZnT8に依存して膵β細胞から分泌される亜鉛イオンの生理的役割、糖尿病発症における意義の解析について集中して解析していく予定である。
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Research Products
(4 results)