2010 Fiscal Year Annual Research Report
Ph陽性白血病の低分子量G蛋白質を介したシグナル伝達機構の治療標的としての検討
Project/Area Number |
22591030
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒須 哲也 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (40361696)
|
Keywords | Ph陽性白血病 / BCR/ABL / 分子標的療法 / 低分子量G蛋白 |
Research Abstract |
Ph陽性白血病の原因であるBCR/ABLチロシンキナーゼに対する阻害剤は、慢性期の慢性骨髄性白血病に著効を呈するが、多くの例では微少残存病変を認め治癒は困難である。また、BCR/ABLキナーゼ領域の変異で耐性を生じ得ることから、進行例およびPh陽性急性リンパ性白血病例では多くが再発し難治化する。申請者は、BCR/ABLがRap1/B-Raf経路を活性化し増殖誘導とアポトーシス抑制に重要な役割を果たすことを見いだし報告してきた。本研究では内皮細胞と造血細胞に広範に発現するPECAM-1に注目し検討を行った。PECAM-1は2つのITIM領域を有し、この部位のチロシンリン酸化によりSHP2その他のシグナル因子と結合することでシグナル伝達にも関与し、抗アポトーシス機能や、SDF-1依存性の造血幹細胞の骨髄への集積、integrinを介した細胞接着の亢進機能を有し、また、Rasファミリーの低分子量GTPase Rap1を活性化することも報告されている。 申請者の検討で、PECAM-1は造血細胞においてサイトカインやケモカイン受容体からのRap1等を介した細胞内シグナル経路活性化を巧妙に制御することにより、細胞の増殖、接着、遊走等の調節機構を統合している結果を認めている。 BCR/ABLその他の活性化キナーゼによるこの調節機構の破綻が白血病の発症や進展に関わる可能性も想定され、新規治療の検討のためにも、この機構のさらなる解明をすすめている。
|