2010 Fiscal Year Annual Research Report
治療関連造血器腫瘍発症の予防を目指した病態および分子機序の解明
Project/Area Number |
22591038
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
原田 結花 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (50379848)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 浩徳 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (10314775)
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Keywords | 治療関連造血器腫瘍 / 遺伝子変異 / 転写因子 / 急性前骨髄球性白血病 / AML1/RUNX1遺伝子 / 急性骨髄性白血病 / 骨髄異形成症候群 / ATRA |
Research Abstract |
悪性腫瘍に対する化学療法・放射線療法の進歩により、原発腫瘍の寛解率・治癒率は飛躍的に向上した。しかし一方で、治療関連の二次癌として急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)が増加している。これらの治療関連AML・MDSは治療抵抗性のことが多く、原発腫瘍の増悪を伴って全身状態が悪化し、急速に不幸な転帰をとることが多い。本研究計画では、治療関連造血器腫瘍が(1)どれ位の頻度で起こっているのか(疫学的実態調査)、(2)どのような原因で起こるのか(遺伝子異常の検索)、(3)どのような治療と関連して起こるのか(薬剤量・放射線量の解析)を解明する。そこで本年度は、急性前骨髄球性白血病(APL)治癒後の治療関連白血病について、解析を行った。 APLは治療成績が優れており予後良好で治癒の期待できる白血病である。しかし近年、APL治癒後のAML・MDSの報告が相次いでいる。そこでAPL全症例の調査を行い、124例中再発10例、治療関連AML・MDS11例を解析した。治療関連AML・MDS例の腫瘍細胞は初発や再発APLのものとは異なり、幼若な造血幹細胞から発生したものであった。遺伝子異常としてRUNX1点突然変異やキメラ遺伝子などが同定され、APL白血病細胞とは異なる正常あるいはpreAPL造血幹細胞がAPLに対する治療により遺伝子異常を獲得して発症していることが示唆された。これは既存のAPL治療に警鐘を鳴らす研究結果であり、学会や論文で報告した。また高齢者APLに対する治療成績が著しく悪いことを示し、新規高齢者白血病治療戦略の構築に寄与した。
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