Research Abstract |
申請者らは慢性骨髄性白血病(CML)の分子標的薬メシル酸イマチニブ(グリベック^R)が,他のBCR-ABLを発現しない白血病細胞株や癌細胞株では,オートファジーを強力に誘導し,かつ,細胞保護効果を発現することを発見した。さらに,murine embrinonic fibroblastを含めた正常細胞においても同様な現象が観察された(Ohtomo T,Miyazawa K. et al. Biochem. Biophy. Res. Commun.2010.)。この現象は他の一部のチロシンキナーゼ阻害剤によっても細胞種を超えて普遍的に観察される。本研究ではこのオートファジーによる細胞保護作用に着目し,本現象にかかわる標的チロシンキナーゼの同定を行うことを主目的としている。 イマチニブ,スニチニブ,ダサチニブ,ニロチニブを含む各種チロシンキナーゼ(TK)阻害剤によるオートファジー誘導能と細胞保護効果のスクリーニングを中心に実施し,最も細胞保護効果の優れたキナーゼ阻害剤と細胞株との組み合わせの探索を行った。その結果,イマチニブとHL-60細胞との組合せが,オートファジー誘導能と細胞保護効果において,効率性と再現性で最も優れた系であることが判明した。また,スニチニブではオートファジー誘導と細胞保護効果の両者が共に発現しないことが明らかとなった。そこで,各キナーゼ阻害剤の阻害活性のスペクトルよりABL,ARG,KIT,PDGF受容体に絞り込みを行い,オートファジー誘導と細胞保護効果の生物活性を指標にsiRNAによるノックダウンを試みた。しかし,いずれのキナーゼ発現抑制においても上記の生物活性が誘導されなかった。そこで同定法の見直しを行い,機能性ナノビーズ(半田ビーズ)にイマチニブの固層化を行い,HL-60細胞の細胞内タンパク可溶液との混和を行うことでone-step精製によりイマチニブ結合タンパクの同定を行うこととした。現在,半田ビーズへのイマチニブの固層化も終了し,精製・同定が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進行し,標的キナーゼの同定のための実験系も確立できた。しかし,各種チロシンキナーゼ阻害剤の阻害活性のスペクトルから候補のキナーゼの絞り込みを行い,siRNAでノックダウンすることで同定する方法が困難であることが判明したため,下記(12)のような実験手法に変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性ナノビーズ(半田ビーズ)にイマチニブの固層化を行い,HL-60細胞の細胞内タンパク可溶液と混和するこで,イマチニブ結合タンパクのone-step精製を行う。質量分析よりイマチニブ結合タンパクの同定を行い,siRNAでノックダウンすることで,オートファジー誘導と細胞保護効果に関与する結合タンパクの同定を行う。
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