2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591052
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
岸 文雄 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40153077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
簗取 いずみ 川崎医科大学, 医学部, 助教 (40454847)
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Keywords | ヘム / 輸送体 / FLVCR1 / PCARP |
Research Abstract |
本研究は鉄イオンおよびヘムの動向を種々の条件下において明らかにすることを目的に研究を行っている。今年度は2010年、posterior column ataxia and retinitis pigmentosa(PCARP)においてヘムの排出を行う輸送体feline leukemia virus subgroup Creceptor1(FLVCR1)に変異があるとの報告をうけ、FLVCR1とPCARPの関係について解析を行い、その原因を明らかにすることを目指した。現在までに、PCARP家系においてFLVCR1のアミノ酸置換を伴う1塩基変異が4カ所報告されている。そこで、これらの変異体についてヘム排出機能の変化を解析した。その結果、これら4つの変異体ではいずれもヘムの排出能力が野生型と比較して著しく低下していた。また、ヘム排出能力の低下に伴い、ヘムの過剰な細胞内蓄積のために細胞障害をおこしていることが明らかとなった。さらに、変異体がヘム排出能力を喪失する機序を明らかにするために、これら変異体をヒト上皮細胞に発現させ、解析を行った。その結果、野生型では細胞膜に局在するのに対して、変異体は小胞体及びライソソームに局在し、細胞膜には輸送されないことが判明した。また、変異体分子は、その安定性が低下していることも明らかになった。以上のことにより、FLVCR1の変異によりFLVCR1は細胞膜へと正しく輸送されないため、ヘムの排出ができず、細胞内に蓄積したヘムにより細胞障害が起こり、PCARPの発症へとつながっている可能性が示唆された。本研究で明らかにしたことはPCARPの原因解明のきっかけになるだけでなく、細胞内でのヘム代謝機構の解明につながる重要な解析結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここ数年で、新たな鉄・ヘム代謝関連分子および、それらが原因と思われる多くの疾患が報告されてきている。そのため、当初の計画よりもより多くの分子についての解析を行うことが必要となり、当初の計画よりもやや遅れている。また、本年度の研究計画の1つであった、ドキシサイクリン誘導性shRNA発現システムを細胞株にて樹立することを試みたが、shRNAの効果が十分でなく、未だその細胞株の樹立に成功していない。しかし、長期的に遺伝子を抑制する必要があり、siRNAなどの短期的に遺伝子抑制をする系では十分な実験ができないことから、本年度も引き続きshRNA発現システムの構築を行う予定である。しかし、ヘム輸送体の機能解析は予想以上に進んでおり、その研究成果は論文印刷中となっている。従って、研究全体としては概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、細胞内での鉄およびヘムの輸送経路を明らかにすることを目的に研究を進める。ヘム及び鉄について以下の項目についてそれぞれ解析を進めて行く。 1)ヘムの取り込み機構について ヘムは細胞外から取り込まれる際に輸送体を利用するのか、またエンドサイトーシスによる取り込みで行われるのかが明らかでない。鉄はヘムとして約60%が吸収されると知られており、ヘムの食餌中からの取り込み機構について解析することは、鉄の効率的な体内への吸収を行わせるうえで重要である。昨年度までに確立したヘム類似体を用いた測定法を活用することで、本研究テーマについて解析を進めることが可能だと考えられる。さらに、現在まで明らかにされている種々の輸送体が吸収上皮細胞にてヘムの輸送をどのように制御しているかについて解析をすすめていく。 2)二価鉄イオンの取り込みについて 末梢細胞においては、主に二価鉄イオンはトランスフェリンを介して、エンドサイトーシスで取り込まれた後、トランスフェリンから解離した鉄イオンは二価金属輸送体によって細胞質内に取り込まれる。二価鉄イオンの主な利用場所はミトコンドリアであるが、細胞質に取り込まれた二価鉄イオンがどのようにしてミトコンドリアまで輸送されているのかは明らかでない。本年度は、細胞質内の二価鉄イオンの動向について研究を進める。
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