2010 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス持続感染におけるリンパ球の抗原特異性と機能に関する研究
Project/Area Number |
22591060
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 徹也 名古屋大学, 医学系研究科, COE特任講師 (80508929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 嘉規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20373491)
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Keywords | サイトメガロウイルス感染 / 抗原特異的T細胞 / Programmed cell death-1 |
Research Abstract |
同種造血幹細胞移植を行った12例の患者末梢血中サイトメガロウイルス(CMV)、エブスタインバールウイルス(EBV)量変化を、リアルタイムPCR定量法により経時的にモニタリングを行い、それぞれ1例ずつの持続感染が認められた。 移植後難治性CMV感染を合併した患者末梢血単核球(PBMC)を用いて、CMV持続感染のメカニズムを検討した。CMV感染にも関わらずCMV pp65に反応してIFN-γを産生するCD8^+T細胞は、健常人から得られたコントロールPBMCと比べて少なかった。CMVエピトープペプチド(QYDPVAALF)での14日間刺激後のCMV抗原特異的T細胞は、患者PBMCから樹立した場合、コントロールPBMCと比べて増殖が不良であり、その細胞表面上のProgrammed cell death-1(PD-1)が高発現していた。抗PD-L1抗体を用いてPD-1/PD-L1pathwayをブロックすると、患者PBMCからのCMV抗原特異的T細胞の増殖は改善した。以上の結果から、移植後難治性CMV感染を合併した患者におけるCD8^+CMV特異的T細胞は機能が低下しており、その機能低下には抑制性受容体であるPD-1が関与していることが明らかとなった。 また、抑制性液性因子について検討するために、患者血清または健常人から得られたコントロール血清を培養メディウムに加えてCMV抗原特異的T細胞樹立を試みた。患者血清に比べ、コントロール血清を用いた場合、患者PBMCからのCMV抗原特異的T細胞の増殖が改善し、さらに細胞表面上のPD-1発現も低下した。このことから、患者血清中にPD-1発現を調節する因子が存在することが示唆された。この血清中に存在する抑制性因子を同定することによって、低下したT細胞機能の回復の新たな方法が得られる可能性があると考え、現在その因子の同定を進めている。
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