2011 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス持続感染におけるリンパ球の抗原特異性と機能に関する研究
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22591060
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 徹也 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80508929)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 嘉規 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20373491)
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Keywords | サイトメガロウイルス / 抗原特異的T細胞 / Programmed cell death-1 / IL-6 |
Research Abstract |
サイトメガロウイルス(CMV)持続感染患者では健常人と比較して末梢血中のCMV特異的T細胞が多いものの、CMV抗原(CMV pp65 エピトープペプチド)に対するIFN-γ産生能や増殖能が低下しており、これら機能低下にはProgrammed cell death-1 (PD-1)が関与していることを明らかにした。さらに、患者血清または健常人から得られたコントロール血清を培養液に加えてCMV特異的T細胞を誘導したところ、コントロール血清を用いた場合、患者末梢血単核球(PBMC)からのCMV特異的T細胞の増殖が改善し、さらにPD-1発現も低下した。このことから、患者血清中にPD-1発現を調節する因子が存在することが示唆された。 そこで、PD-1発現を調節する因子の同定を試みた。患者と健常人の血清中サイトカインを測定したところ、抑制性サイトカインであるIL-10とTGF-βは高くなく、IL-6が患者で高かった。さらに、患者と健常人のPBMCおよび血清を用いてCMV特異的T細胞を誘導した際に、増殖が不良となるにつれて培養液中のIL-6濃度が高くなり、CMV特異的T細胞のPD-1も高発現となった。そして、抗IL-6受容体抗体を用いて、IL-6とIL-6受容体の伝達経路を阻害したところCMV特異的T細胞の増殖が改善した。以上より、IL-6がPD-1を介したT細胞機能低下に関与していることが示唆された。 また、CMV持続感染患者では、コントロール良好なCMV感染患者や健常人と比較してIL-6は有意に高いことが示された。 現在、IL-6がCMV特異的T細胞機能を低下させる機序について検討を進めている。これらの検討から、CMVをはじめとして難治性ウイルス感染のバイオマーカーとしてのIL-6測定の有効性や低下したT細胞機能回復の有効な方法が明らかとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルス持続感染を予測する因子として、IL-6がその候補となることを示している。また、平成23年度以降の研究計画としていた「免疫抑制受容体とそのリガγドの結合阻害によるウイルス特異的T細胞の機能回復の検討」は既に成果がでており、現在その機序について、IL-6との関連も含めて詳細な検討に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
・PD-1を介するCMV特異的T細胞機能低下にIL-6が関与する機序について検討を進め、低下したT細胞の機能回復の有効な方法を明らかにする。 ・CMV感染が持続する患者は多くなく、多数例での検討を行うことが困難であるため、研究分担者が所属する名古屋大学医学部附属病院小児科の検体を用いることを検討する。
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