2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨代謝と血球分化における転写因子NF-kB Re1Aの役割
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22591073
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三瀬 節子 独立行政法人理化学研究所, 生体情報統合技術開発チーム, 開発研究員 (00269052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 貴裕 独立行政法人理化学研究所, 生体情報統合技術開発チーム, サブチームリーダー (60227684)
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Keywords | 骨代謝 / 血球分化 / 転写因子 / NF-kB / 造血幹細胞 / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 造血幹細胞ニッチ |
Research Abstract |
転写因子NF-kBのRe1Aを欠損したマウスは胎生期に死亡する。Re1A欠損胎児の肝臓細胞をX線照射した別のマウスに移植し、血球細胞をRe1A欠損型に置き換えたマウス(以下Re1A欠損キメラマウス)は、骨量が減少し、リンパ球分化が低下する。前年度はRe1A欠損キメラマウスでは破骨細胞が過剰分化していること、また、造血幹細胞そのものの機能には異常がない事を明らかにした。今年度は骨量の減少の原因をより詳細に調べるために骨形態計測を行った。また、造血幹細胞分化のための環境の悪化が、リンパ球分化を低下させている可能性を検証した。 1.骨形態計測 野生型あるいはRe1A欠損型キメラマウスに、骨に取り込まれる蛍光色素カルセインを投与し、骨形成を測定した。その結果、Re1A欠損キメラマウスは、野生型キメラマウスと比べ著しく骨形成が低下していた。骨形成を行う骨芽細胞は、宿主由来であるので、Re1A欠損キメラマウスでも野生型である。そのため、Re1A欠損キメラマウスでは、造血細胞から産生され骨芽細胞の骨形成を誘導する何らかの因子に異常がある事が示めされた。 2.造血幹細胞の環境の悪化の検証 Re1A欠損型の胎児肝臓細胞を移植する際、1/10量の野生型の骨髄細胞を共に移植すると、Re1A欠損型のリンパ球の分化は正常になる。しかし、胎児肝臓細胞のみを移植したRe1A欠損キメラマウスの骨髄細胞を野生型の骨髄細胞と共に移植しても、リンパ球の分化は低下したままであった。これらの実験は、一度骨粗鬆症の状態の骨髄内環境にいた造血幹細胞は、その機能が低下することを示している。また、Re1A欠損キメラマウスでは、造血幹細胞ニッチに必要なCXCL12やIL-7などが低下していることを明らかにした。 今後、骨芽細胞に作用して骨形成を誘導する因子の同定し、その因子が造血幹細胞ニッチにどの様な影響を与えているかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書で計画していた(1)Re1A欠損キメラマウスの骨芽細胞と破骨細胞の機能と(2)造血幹細胞の分化能について、本年度に既に解析が終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度である来年度は、Re1A欠損キメラマウスで機能に異常がある骨形成誘導因子の同定を行う。そのために先ず、in vitroで骨形成を誘導する実験系を立ち上げ、これに様々な種類の細胞を加えた時に骨形成に与える影響を調べる。骨形成誘導能力の高い細胞の機能を、野生型とRe1A欠損型と比較する。また、その細胞の遺伝子発現パターンを野生型とRe1A欠損型とで比較し、どの様な遺伝子が関わっているかを明らかにする。可能性のある遺伝子をリストアップし、それらの発現ベクターを作製する。これをin vitroでの骨形成の実験系で発現させ、どの遺伝子が骨形成誘導因子として働いているかを同定する。また、これまでの結果を論文として執筆し、発表する。
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