2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管炎の新規な病態関連因子―ペプチドミクスによる網羅的探索と臨床的意義の基盤解析
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22591087
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
尾崎 承一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (00231233)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 智啓 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80233807)
黒川 真奈絵 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (90301598)
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Keywords | ANCA関連血管炎 / 前向き臨床試験 / 病態関連ペプチド / プロテオミクス / アポリポ蛋白A-1 |
Research Abstract |
今年度は顕微鏡的多発血管炎(MPA)の病態や病勢と関連性の高いマーカーを広範に検索するため、治療前のMPA(n=33)、他の血管炎対照群(oSV; n=20)、全身性エリテマトーデス(SLE; n=25)の血清ペプチドを網羅的に解析し、MPAとoSV、または、MPAとSLEの間において有意差(p<0.05)を認める13個のペプチドを検出した。この中で5個のペプチドにおいて、MPAの治療前値が治療開始後1週間値または6週間値のどちらかより有意に(p<0.05)高値を示した。このうち3個(p1523, p1738, p2503)がMPAの病態や病勢との関連性が高いと考えられ、中でもp1523がバイオマーカーとしての有用性が最も高いと考えられた。このp1523を2D-HPLCにより分画した後、MS/MS法にてアミノ酸配列を解析したところ、N-SALEEYTKKLNTQ-Cという配列であることが判明し、これはアポリポ蛋白質A-IのC末端13アミノ酸の配列と同一であった(AC13と命名)。 AC13はMPAの治療前に高値で、治療開始1週間後、治療開始6週間後には有意に低下して、健常者や他疾患患者の血清レベルになった。皮膚由来および肺由来のヒト微小血管内皮細胞株にAC13または対照ペプチドを加えた培養系において、AC13添加培養液中のIL-6およびIL-8の蛋白質レベルは対照群よりも有意に高濃度であった。この培養細胞抽出物を用いてreal time PCRでmRNAの発現を調べたところ、IL-6およびIL-8とも対照群に比較しAC13添加において有意な転写の上昇が認められた。従って、AC13添加によるIL-6およびIL-8の分泌亢進は、各サイトカインの分解抑制によるものではなく、転写増強によることが判明した。 以上のことから、MPAの疾患活動性の高い時期には、アポリポ蛋白質A-IのC末端からAC13が遊離して血清中の濃度が上昇し、血管内皮細胞に作用してIL-6およびIL-8などの転写を増強して分泌を亢進させ、MPAの病態に関与することが示唆された。AC13の血清濃度はMPAの治療後には正常レベルに復し、また他の血管炎やSLEの疾患活動期には上昇しないことから、AC13はMPAの新たなバイオマーカーとなることが示唆された。
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Research Products
(28 results)