2011 Fiscal Year Annual Research Report
発達期脳に及ぼすてんかん発作の影響-皮質形成異常を有するモデル動物を用いた研究-
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22591118
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高橋 悟 旭川医科大学, 医学部, 講師 (10431404)
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Keywords | 脳・神経 / てんかん / 皮質形成異常 / モデル動物 / cyclin-dependent kinase 5 |
Research Abstract |
本研究では、大脳皮質形成異常が発達過程にある脳へ与える影響について明らかにすることを目的とし、皮質形成異常を有してんかんを発症するモデル動物(前脳特異的Cdk5欠損マウス,Cdk5cKOマウス)を用いてその分子メカニズムを解明している。Cdk5cKOマウスは、けいれん発作の出現に伴い神経変性を生じ、マイクログリアの活性化を伴っていた。我々はこれまでの研究において、マイクログリアの活性化には神経細胞の過剰興奮の繰り返しにより分泌される組織性プラスミノーゲン活性化因子(tissue-type plasminogen activator, t-PA)が関与していることを明らかにしている(Takahashi S, et al. Am J Pathol 176 : 320-329, 2010)。そこで、神経変性におけるt-PAの関与を検討する目的で、Cdk5cKOマウスとt-PAノックアウトマウスを交配し、t-PAを欠損したCdk5cKOマウス(DOKOマウス、Cdk5cKO ; tPA-/-)の表現型と神経病理変化を検討した。Cdk5cKOマウスとDOKOマウスとの間に体重変化、生存率には差はなかった。神経病理学的検討によると、DOKOマウスではグリア細胞の増生は抑制されていたが、神経変性所見には差がみられなかった。この結果は、Cdk5cKOマウスにみられた神経変性の病態には、tPAが関与しないメカニズムが存在することを示している。本研究の成果は、難治性てんかんを有する患者の神経学的予後を改善させる分子標的療法の開発基盤となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cdk5cKOマウスにみられた神経変性の病態として2つの仮説を立て検証している。(1)マイクログリアの活性化に伴う炎症による影響。tPAノックアウトマウスと交配したCdk5cKO ; tPA-/-マウスの解析をすすめ、tPAの関与しないメカニズムが存在するという結論を得た。(2)アポトーシスの亢進による影響。Baxノックアウトマウスとの交配は進んでおり、最終年度に解析結果をまとめる予定。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)マイクログリアの活性化を伴う炎症が神経変性に関与する可能性について、tPAの関与しないメカニズムの存在が示唆された。そこで、炎症の抑制が神経保護効果を示すか検討するために、動物に抗炎症薬を投薬し、神経病理学的検討を行う予定である。 (2)Cdk5cKOマウス脳では神経細胞数が減少しており、アポトーシス亢進の関与が考えられる。この仮説を証明するために、アポトーシス誘導タンパクBaxを欠損したBaxノックアウトマウスと交配し、Baxを欠損したCdk5cKOマウスの表現型解析と神経細胞死の評価を行う。Baxノックアウトマウスとの交配は、連携研究者である大島登志男教授(早稲田大学理工学術院先進理工学部生命医科学分子脳神経科学)の研究室で行っている。
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