2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591130
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 拓志 岡山大学, 大学病院, 医員 (80572990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大守 伊織 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20403488)
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Keywords | 熱性けいれん / 電位依存性ナトリウムチャネル / 発熱感受性 |
Research Abstract |
Scn1a遺伝子変異ラットは、高体温感受性けいれんが認められる。この変異型電位依存性ナトリウムチャネルが温度の上昇に伴ってどのように生理活性が変化するかを明らかにするため、リコンビナントの系を用いて実験を行った。すなわち、cDNA-SCN1A-N1417Hを作製し、哺乳動物細胞HEK293に強制発現させた。電位依存性ナトリウムチャネルのアルファ1サブユニットとベータ1サブユニット、ベータ2サブユニットを同時発現させた。24時間から48時間後に実験を行った。細胞外液の温度を変化させて、パッチクランプ法を用い、電圧固定法によるナトリウム電流の全細胞記録を行った。 電位依存性活性化については、-80mVから+60mVまで10mVずつ電位を上げて20msの脱分極刺激を与えた。電位依存性不活性化については、-140mVから-10mVまでの脱分極刺激を100ms与えたのち、引き続き-10mVの脱分極刺激を与えた。細胞外液の温度を22℃から28℃、34℃、40℃に変化させ、電位依存性活性化、不活性化の変化を野生型と比較した。野生型の電位依存性活性化については、温度上昇に伴う過分極シフトが認められ、不活性化についても温度上昇に伴う不活性化曲線の過分極シフトが認められた。また、不活性化の時定数については、細胞外液の温度の上昇に伴って早くなった。N1417H変異では、野生型に比し、温度依存性の活性化、不活性化の変動が有意に小さかった。 動物実験においては、モデルラットの実験数を増やし、熱性けいれん発症時の血液ガスの変化を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種抗てんかん薬を用いて、熱性けいれんを抑制する主な有効薬剤は、臭化カリウムとジアゼパムであることを確認した。この反応性は、ヒトにおけるけいれん抑制効果と類似していた。本モデルラットがヒトとの病態を反映し、薬物に対する反応も近いので、新規治療薬の開発に有用であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
抗てんかん薬を経口で1回投与した時の熱性けいれんの抑制効果を検討する。判定に用いる項目は、発作を起こすまでの時間(潜時)、発作を起こした時のラットの直腸温(けいれん閾値)、発作持続時間、発作の重症度である。さらに皮質脳波を測定し、脳波の変化を評価する。また、抗てんかん薬の副作用である運動障害を評価するため、バランスビームテストおよびロータロッドテストも行う予定である。 Scn1a遺伝子変異ラットにおいて、体温上昇時に呼吸性アルカローシスが誘発せていることを確認したので、アセタゾラミドを投与して代謝性アシドーシスを引き起こす、またはCO2濃度の高いエアの吸引で呼吸性アシドーシスをおこしてけいれんが抑制されるかどうか検討する。
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