2011 Fiscal Year Annual Research Report
高ロイシン血症例における分枝鎖αケト酸脱水素酵素のチアミン反応性に関する研究
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22591131
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
但馬 剛 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00432716)
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Keywords | ロイシン / メープルシロップ尿症 / 分枝鎖αケト酸脱水素酵素 / BCKDK |
Research Abstract |
本研究開始時点までに我々は、血中ロイシン高値24例の分枝鎖αケト酸脱水素酵素複合体(BCKAD)活性を測定し、14例をメープルシロップ尿症(MSUD)罹患者と診断していた。平成22年度には1症例、23年度には6例を新たに解析し、3例を罹患者と診断した。正常活性を認めた14例中2例(同胞例)は血中ロイシン増加が続いており、遺伝的原因が強く推定された。22年度は上記同胞例のBCKAD遺伝子解析(E1α,E1β,E2)を行い、変異は検出されていない。この同胞例がチアミン反応性MSUD罹患者と仮定すると、これらサブユニットの大欠失等の可能性は考えられず、新規の病因が推測された。 候補分子として今年度は分枝鎖アミノトランスフェラーゼ(BCATc;細胞質局在,BCATm;ミトコンドリア局在)を解析し年が、変異は検出されなかった。続いて、BCKADの活性調節酵素であるBCKAD kinase (BCKDK), BCKAD phosphatase (PPM1K)のうち前者を解析したところ、同胞例の両者に同一のヘテロ接合性1塩基置換が同定された。 BCKAD kinaseはリン酸化によってBCKAD活性を抑制する酵素であり、BCKDK欠損マウスはBCKAD活性の亢進によって血中ロイシン低下を示すと報告されている。従って、血中ロイシン高値の原因となりうるBCKAD遺伝子の変化は機能亢進性変異である必要があり、ヘテロ接合性変異による常染色体優性遺伝形式を示すことが想定される。このようなヒト症例は現在まで知られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトにおいて血中ロイシン濃度の調節に関与しうると考えられる8種の候補遺伝子のうち、6種類目(BCKDK)の解析で新規の塩基置換が同定された。本遺伝子の変異に起因する臨床患者は過去に報告がなく、メープルシロップ尿症のスクリーニングにおいて考慮すべき新たな原因の発見につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、上記同胞例の両親を解析してBCKDK塩基置換の由来を確認し、伝達した親の血中ロイシン濃度測定を実施する。同時に、BCKDKリン酸化亢進の有無を検証するための機能解析を進める。リン酸化亢進によるBCKAD活性の抑制が示された場合は、高濃度のチアミン添加による活性回復効果について検討する方針である。
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