2010 Fiscal Year Annual Research Report
機能的脳画像法による思春期やせ症の病態解明と治療に関する研究
Project/Area Number |
22591143
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
永光 信一郎 久留米大学, 医学部, 講師 (30258454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 正敏 久留米大学, 医学部, 教授 (20168256)
岡村 尚昌 久留米大学, 高次脳疾患研究所, 助教 (00454918)
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Keywords | 思春期やせ症 / 摂食障害 / 近赤外線光トポグラフィー / 脳科学 |
Research Abstract |
思春期やせ症は、減食、拒食による低体重の維持とやせ願望を特徴とする疾患である。様々な精神活動の障害を呈する事から、小児期・思春期の発達的な精神活動を知る上で重要な疾患である。最近では発症の低年齢化と、発達障害の合併例などが増え、発症に至る病態と治療法の解明が期待されている。一方、世界に先駆けて日本で開発された機能的脳画像法のひとつである近赤外線光トポグラフィーは、現在までに新生児領域の発達的脳機能の解明、小児神経疾患におけるリハビリテーションの有用性に関する科学的検証、成人領域の精神疾患の病態解明に寄与してきた。本研究の目的は、近赤外線光トポグラフィーなど脳科学の技術を駆使し、思春期やせ症の認知機構を脳科学の視点から科学的に検証することである。前頭葉機能を反映する語想起課題中の前頭前野の脳活動を16人の思春期発症拒食症と12人の正常対象者で比較検討した。想起された語数は両群で差は認めないものの、正常対象群では酸化型および全Hb濃度がタスクと同時に上昇し、還元型Hbはタスクと同時に下降し、タスク終了と同時にそれらHb値は、基準値に近付く反応を示した。一方で、拒食症群では、酸化型、全Hb、および還元型Hb濃度はタスク中、タスク前後とも変化がないかわずかな変動であった。手指タッピングによる運動機能タスクでは、正常対象群、拒食群ともタスクと同時に酸化型および全Hb濃度の上昇、還元型Hbの低下の同じ反応を示した。酸化型Hb濃度の変化率と摂食態度スコア(Eating Attitude Test-26)との相関では、正常群が逆相関の関係に対して、拒食症群では正相関の関係を示した。両群における語想起課題中の前頭前野の反応パターンの相違は、拒食症群における認知過程における最少ニューロサーキットの適応、また食行動没頭に関連した異なるニューロサーキットの使用が示唆された。
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