2012 Fiscal Year Annual Research Report
非生毛部に生じた悪性黒色腫に対する表皮基底面の走査型電子顕微鏡学的観察
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22591222
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
吉田 雄一 鳥取大学, 医学部, 准教授 (70335975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 七子 鳥取大学, 医学部附属病院, 准教授 (10304213)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 癌 / 悪性黒色種 / ダーモスコピー |
Research Abstract |
今年度も昨年に引き続き、非生毛部(足底)に生じた良性の色素細胞母斑および悪性黒色腫をまずダーモスコープで観察した。ダーモスコピー所見として色素細胞母斑ではparallel furrow pattern、悪性黒色腫ではparallel ridge patternという典型的なpatternを呈していた。 得られた余剰組織を固定した後、高濃度アルカリ処理法を用いて真皮を基底面から剥離し、走査型顕微鏡を用いて色素細胞母斑と悪性黒色腫の腫瘍細胞の分布や表皮基底細胞の形態の変化について表皮基底面から観察を行った。 今年度は主に荷重部に生じた早期悪性黒色腫に対して、継続的に走査型電子顕微鏡を用いた観察をすすめた。昨年度までに早期の悪性黒色腫では意外にも表皮突起の表面に露出する腫瘍細胞は少なく、基底細胞間のわずかな裂隙から突出する所見がみられていた。また、limiting ridgeとintermediate ridgeの間に認められるtransverse ridgeの突起の幅が広くなり、複雑に分枝する像がみられていた。 症例数を増やして検討を行った結果、基底細胞の変化(細胞間隙の開大)はやはり汗腺の分布するintermediate ridgeの基底細胞にのみ特徴的であった。これらは早期悪性黒色腫の腫瘍細胞がintermediate ridgeで選択的に増殖する結果生じる表皮基底面の変化と考えられ、悪性黒色腫のメラニン色素が皮丘にみられる一因ではないかと考えられた。 しかしながら、足底では荷重部、非荷重部による表皮突起の構造に違いがあるため、さらに症例数を増やして検討する必要がある。また、進行期悪性黒色腫において早期病変からどのような様式で進展していくのか、同一部位に生じた色素細胞母斑において悪性黒色腫とどのような違いがあるのか、今後さらに研究をすすめて行く必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本人の悪性黒色腫の好発部位は足底であるが、診断にはダーモスコピーを用いた観察が極めて有用である。悪性黒色腫ではparallel ridge pattern、良性の色素細胞母斑ではparallel furrow patternを示すが、その理由を明らかにするため、表皮基底面から走査顕微鏡を用いた観察を行った。 初年度には良性の色素細胞母斑では基底面に均一に分布する母斑細胞が確認できた。 次年度は早期悪性黒色腫では意外にも基底面に分布する腫瘍細胞は確認できず、基底細胞間の開大と隙間から突出する腫瘍細胞が確認できた。 昨年度には主に荷重部に生じた早期悪性黒色腫について症例数を増やして研究をすすめた。その結果、表皮基底細胞の隙間の開大はintermediate ridgeの基底細胞にのみ特徴的であり、limiting ridgeでは確認できなかった。また、transverse ridgeの突起の幅も広くなっていた。これらの所見は早期悪性黒色腫の腫瘍細胞がintermediate ridgeで選択的に増殖する結果生じる表皮基底面の変化と考えられ、悪性黒色腫のメラニン色素が皮丘にみられる一因ではないかと考えられた。 来年度は良性の色素細胞母斑の症例数を増やして、部位による差があるのか検討を行う予定である。 徐々に特徴的な所見が得られているが、悪性黒色腫は稀な疾患であり、今後も研究を継続し症例を積み重ねる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も日本人において比較的発生頻度の高い掌蹠の悪性黒色腫と良性の色素性母斑について、特徴的なダーモスコピー所見を呈する機序を明らかにするため、走査型顕微鏡を用いた研究を遂行する必要がある。 具体的には、悪性黒色腫の早期病変と進行期においてどのような違いがあるのか、色素細胞母斑との違いについて、足底では荷重部、非荷重部による表皮突起の構造に違いがあるため、部位による差はあるのか、またダーモスコピー像や病理組織像との対比や予後との関連についてもあわせて検討を行っていく予定である。 進行した悪性黒色腫は極めて難治性で、治療法も限られており、本研究により悪性黒色腫の腫瘍細胞の進展様式を明らかにすることができれば、悪性黒色腫の発生原因や治療に対する貢献が期待できると考えられる。
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