2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591231
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
照井 正 日本大学, 医学部, 教授 (30172109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡山 吉道 日本大学, 医学部, 准教授 (80292605)
稲冨 徹 日本大学, 医学部, 准教授 (10451345)
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Keywords | 皮膚 / アレルギー / 蕁麻疹 / 病態 / 新規診断法 |
Research Abstract |
慢性蕁麻疹とは明らかな直接的誘因なく紅斑と膨疹の出没を繰り返す蕁麻疹のうち発症後4週以上継続したものを言い、その中で自己の血清皮内テストが陽性であるものを、自己免疫性蕁麻疹と定義している。現在までにマスト細胞からの脱顆粒を惹起する自己抗体として抗FcεRIα鎖抗体、抗IgE抗体の2種類が同定されている。これら自己抗体がヒト皮膚マスト細胞上に発現しているFcεRIを架橋することによりヒスタミンやアラキドン酸代謝産物、サイトカインが遊離されることが膨疹形成の機序と考えられている。我々はELISA法を用いて抗FcεRIα鎖抗体の定量を試みた。検出限界10ng/mlのELISAを構築した。その結果、患者群(942.4±201.5ng/ml,n=48)と健常群(939.5±235.4ng/ml,n=48)では有意な差はなかった。また自己血清皮内テストの陽性群と陰性群でも抗体価に有意な差はなかった。このことから抗FcεRIα鎖抗体には活性型と不活性型が存在すると考えられ、慢性蕁麻疹患者及び健常人から精製した抗FcεRIα鎖抗体をヒトマスト細胞に添加したところ、患者の抗体では脱顆粒を惹起できるものがあった。現在、活性型と不活性型の差異を明らかにすべくさらなる研究を進めている。 前述のごとく慢性蕁麻疹の一部は自己免疫性と考えられているが、大半が特発性に分類される。アレルゲンーIgE系を介した刺激以外にもマスト細胞の刺激因子が多数想定されており、神経ペプチドの一種であるサプスタンスPも刺激因子の一つとして知られている。実際、慢性蕁麻疹の病変部でサブスタンスP濃度が上昇しているという報告がある。最近、サブスタンスPの受容体としてMrgX2が同定された。我々はMrgX2がヒト皮膚マスト細胞に発現していることを確認した。さらにMrgX2mRNAをノックダウンしたヒト培養マスト細胞ではサプスタンスPによる脱顆粒が有意に抑制された。したがって病変部位でサブスタンスP濃度が上昇している慢性蕁麻疹の症例ではMrgX2を介した脱顆粒反応が蕁麻疹の原因として考えられた。現在、慢性蕁麻疹患者の皮膚マスト細胞におけるMrgX2の発現を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、抗高親和性IgE受容体(FcεRI)抗体のELISA系を確立した。しかし、このELISAを使った検査の結果、慢性蕁麻疹患者血清ばかりでなく、健常人の血清中にも抗FcεRI抗体が存在することが明らかにされた。その後の研究で慢性蕁麻疹患者血清はマスト細胞の脱顆粒を惹起するが、健常人血清は脱顆粒を起こさないことがわかったため、抗FcεRI抗体の中に脱顆粒を惹起する抗体と惹起しない抗体があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
11.で述べたように抗FcεRI抗体の中に脱顆粒を惹起する抗体と惹起しない抗体があることが示唆された。現在、FcεRIα鎖のペプチドを合成に、慢性蕁麻疹と健常者の間で結合する部位が異なる可能性について検討中である(epitopemapping)。これらが明らかにした後に、慢性蕁麻疹血清中の抗FcεRI抗体のみが結合するペプチドを使ったより精度の高いELISA系を確立したい。
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