2010 Fiscal Year Annual Research Report
双極性障害におけるアラキドン酸カスケード障害仮説の検証
Project/Area Number |
22591254
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 克治 北海道大学, 病院, 助教 (70344512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久住 一郎 北海道大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (30250426)
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Keywords | アラキドン酸カスケード / 血小板 / 双極性障害 / カルシウム / TEMPS-A / 循環気質 / 気分障害 |
Research Abstract |
本研究の目的は、気分障害患者のアラキドン酸(AA)カスケードに関わる蛋白の機能と躁転に代表されるスイッチングプロセスあるいは血小板カルシウム反応などの生物学的指標との関連を明らかにすることである。平成22年度は、AAカスケードの中核をなすCox-2のウェスタンブロットによる定量の確立を目指す一方で、気分障害患者を研究にエントリーし、カルシウム反応を測定するとともに質問紙を用いて気質などの臨床背景のデータを集積した。Cox-2の定量は、ヒト血小板で実施する前に培養細胞(SH-SY5Y細胞)で確立させたが、ヒト血小板では未実施であり来年度に繰り越しとなった。エントリー患者の縦断的採血は、躁転時に実施する予定であったが今年度は対象となる状態像を呈するエントリー患者がなく、来年度へ繰り越しとなった。平成22年度にエントリーされた患者は25例、健常対照者は59例であった。これらのうち、年齢と性をマッチさせた19例ずつを抽出し気質と血小板カルシウム反応の関連について検討した結果を研究成果として報告した。TEMPS-Aで測定される気質では発揚気質を除く4気質(抑うつ気質、循環気質、焦燥気質、不安気質)で患者群の方が有意に高得点であった。カルシウム反応の大きさと各気質の得点は両群とも相関は認めなかったが、静止時カルシウム濃度は患者群で循環気質のみ有意に正の相関を認めた(r=0.46,p<0.05;spearmanの順位相関)。これまで血小板カルシウム動態と気質との関連については報告がなく、双極性障害の病態生理として多数の報告のある静止時カルシウム濃度上昇と双極性障害の特徴的気質として古くから指摘のある循環気質に有意な相関が認められたことは、気分障害の病態のみならず(気質という)臨床特性に生物学的な根拠を与えたという意味で重要な所見であると思われる。
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Research Products
(1 results)