2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗精神病薬シグナル伝達を利用した統合失調症の新たな治療標的分子の開発
Project/Area Number |
22591269
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
服部 功太郎 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第3部, 室長 (50415569)
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Keywords | Fynキナーゼ / D2受容体 / NMDA受容体 / 統合失調症 |
Research Abstract |
本研究の主目的は「抗精神病薬により活性化するFynと下流分子の精神薬理学的機能を明らかにすること」であり、H23年度は(1)下流分子2種のうち、リン酸化部位を同定できていなかった下流分子BについてLC-MSを用い、主要なリン酸化部位明らかにすること、そして、(2)統合失調症死後脳でFynや下流分子の解析を行うことを目指した。(1)については本年度中には解決できなかった。薬物投与後のマウス前脳を可溶化し、リン酸化物をカラム精製後、分子Bに対する抗体で免疫沈降し、SDS-PAGEのゲルを切り抜いて消化後、LC-MS/MS解析するという実験を数回実施した。しかし、分子自体は検出されるもののピークが小さくリン酸化部位の同定には至らなかった。免疫沈降による分子Bの回収が不十分であったと考えられたため、スケールアップしたり、抗体カラムを作成したり、抗体を変更したり等を行ったが、大きな改善は得られなかった。(2)の死後脳を用いた解析では、前年度までにスタンレー研究所の60検体のコホートにて、統合失調症群でFynタンパク質の亢進がみられていた。今年度は再現確認用の105検体(統合失調症、健常、双極性障害各35例)のコホートで、盲研解析を実施しFynタンパク質の量が増加していることを確認した。両コホートともFynのタンパク質の量と抗精神病薬の生涯投与量との間に相関はみられなかった。またマウス(n・15)にリスペリドンを3週間経口投与し、溶媒投与群と比較した場合でも前脳におけるFynタンパク質の量に変化を認めなかった。以上のように統合失調症死後脳におけるFynタンパク質の量の変化は、2種のコホートの盲研解析で確認されたため、統合失調症の分子病態に関わっている可能性が高いと考えられた。また、発現部位やドーパミン受容体機能との関わりからFynとの関連が示唆されたCADPS2について、やはり統合失調症で発現が変化していることを見出し報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Fynの下流分子として同定された2種について、リン酸化の部位を同定し、その機能を明らかにすることは本研究の重要な目的の一つであった。分子Aについては解析が進んでいるが、分子Bについては、リン酸化の部位自体が未だ同定できていない。一方、死後脳を用いた解析により、Fynの統合失調症分子病態における役割が明らかになりつつあることは、重要な進展と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ひとまず、現段階の成果を論文として報告する。分子Bについても引き続き解析を試みるが、統合失調症死後脳で分子Bの変化がみられず、一方Fyn自体の量が増加していたことから、「統合失調症でなぜFynが増えているのか」「Fyn増加の意義は何か」という問いも重要と考えられる。この問いに答えるため、臨床検体や動物モデルを用いた解析に着手したい。当初の目的である「Fyn活性化の薬理学的意義を明らかにすること」にもつながると考えられる。
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Research Products
(4 results)