2011 Fiscal Year Annual Research Report
海馬部位特異的遺伝子改変動物を用いた認知機能におけるグルタミン酸神経系の機能解明
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22591274
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神出 誠一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30376454)
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Keywords | 海馬 / NMDA受容体 / 精神疾患 |
Research Abstract |
H23年度は主に海馬苔状細胞特異的NMDA受容体欠損マウスについて研究を行った。組織学的研究としては、苔状細胞でのNMDA受容体欠損により歯状回の機能がどう変化するかを検討するため、青斑核からのノルアドレナリン繊維が主に苔状細胞に投射することを踏まえて、ドーパミンβ水酸化酵素、チロシン水酸化酵素の発現について検討したが、対照と有意な差は見られなかった。また歯状回の機能に関連して、歯状回穎粒細胞の軸索である苔状繊維の走行はNMDA受容体の欠損後も明らかな異常は認められなかった。またH22年度に明らかとなった同マウス海馬での神経新生の低下に関連して、GABA免疫染色の低下を認めたことから、やはり苔状細胞から歯状回の籠状細胞等の介在ニューロンへの入力が減弱することで、介在ニューロンが関与する神経新生の減少に至る可能性が考えられた。以上から、苔状細胞NmA受容体欠損による歯状回機能変化のメカニズムについてGABA神経系との密接な関連が示唆されたが、それ以外の変化についてはH23年度の研究では十分にあきらかにされなかった。 行動学的研究では、H22年度にみられた電撃後のすくみ行動の減少に関連して不安等について検討した。高架十字迷路では明らかな不安行動の変化は得られなかったものの、オープンフィールド試験では立ち上がり行動の低下が見られ、今後はこの結果の解釈のため、さらなる行動実験が必要である。なお、組織学的検討からノックアウトが生じる時期は7-8週以降からと思われ、この時期と行動変化が始まる時期がおおむね一致している可能性が示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H22年度の結果を受け、特に組織学的研究では海馬歯状回での神経新生の変化を見いだし、その背景についてGABA神経系の関与が明らかになりつつあるなど、手掛かりをつかみつつある。行動実験でもいくつかの表現型を得ちれており、今後の結果と併せてそのメカニズムについても解明される可能性が高いと思われ、概ね順調に経過していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のH23年度の結果を受け、H24年度は組織学的・行動学的研究のまとめを行い、並行して電気生理学的研究を行うことにより、同マウスとCA1・CA3領域NMDA受容体欠損マウスの結果と比較検討することで、海馬機能と精神疾患の関連について検討を進める。
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