2012 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患における脳形態変化の疾患特異性に関する研究
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22591275
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
高橋 努 富山大学, 大学病院, 講師 (60345577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 道雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (40236013)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 磁気共鳴画像 / 統合失調症 / 嗅溝 / 下垂体 / アットリスク精神状態 |
Research Abstract |
精神疾患における脳形態変化の疾患特異性を明らかとする目的で、今年度は各臨床病期において統合失調症圏にみられる脳形態の特徴を縦断変化も含めて検討した。すなわち、磁気共鳴画像(MRI)を用いて、1から4年の間隔で2度の撮像がなされた初回エピソード統合失調症群、慢性統合失調症群、および健常群を対象に、嗅溝の形態や下垂体体積の進行性変化を比較した。さらに精神病発症の高危険群であるアットリスク精神状態(at risk mental state; ARMS)における脳形態の特徴をボクセル単位解析法により検討した。これらの結果を以下にまとめる。1. 初回エピソード統合失調症群において、健常群と比較して嗅溝の深さが有意に浅かった。しかしその深さは統合失調症群、健常群とも経時的に変化せず、また統合失調症群において臨床指標(症状の重症度、服薬、発症年齢、罹病期間など)と相関しなかった。2. 慢性統合失調群において、下垂体体積の経時的な体積減少がみられた。3. 初回エピソード統合失調症群において、健常群と比較して前部帯状回の有意な灰白質減少を認めたが、ARMS群と健常群の比較では灰白質体積に有意差はみられなかった。しかし、後に統合失調症を発症したARMS症例の前部帯状回灰白質体積は、初回エピソード統合失調症群とほぼ同様の値であった。これらの結果から、嗅溝の変化は統合失調症圏における早期神経発達障害を反映すると考えられた。下垂体体積は視床下部―下垂体―副腎系を介したストレス反応の指標と考えられ、疾患経過中に変化するようである。また統合失調症にみられる脳形態変化の少なくとも一部は発症に先立ち存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合失調症の脳形態の特徴については前駆期からの変化を含め着実に知見を蓄積することができた。他の神経精神疾患については予備的解析の段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進捗はおおむね順調である。ただし画像解析技術の進歩に伴い、最新の解析方法に習熟した他施設と共同してより精微な解析を目指すことも考えている。
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