Research Abstract |
I研究の目的:感情の共感性のコントロール不全は広汎性発達障害の特徴のひとつで,この未熟さが「他者理解の未発達」となり,対人関係の障害の一因になっていると考えられる.我々は,成人は固より,幼児専用脳磁計(MEG)を使って,幼児の知覚の「共感」に関連した生理学的現象の定量化を試みた. II実験方法:定型発達児46名(50±10ヶ月)と成人25名を対象に,我々が開発した『共感誘発視覚刺激』中の脳磁図を測定し,等価電流双極子(equivalent current dipole, ECD)法で解析を行った.『共感誘発視覚刺激』として左第二指と左足甲に対し鉛筆やフォーク等で突く動画をそれぞれ30秒間ずつ偽ランダムな順番で被験者の目の前に提示した.その間に,ピエゾ駆動触覚刺激装置により被験者の左第二指に250~750msの間隔で,軽くペン先でつつくような軽い触覚刺激を与え,触覚誘発磁場を等価電流双極子(ECD)法で得られるintensityについて比較した。さらに,成人と幼児のECD潜時の分析,および,160個の測定チャネルそれぞれに対する分析を行った. III結果:3つすべての測定条件に対して明確な双極性データが得られたのは,参加した46名の幼児のうち14名であった.これら14名の幼児の結果と成人の結果とを比較したところ,幼児における双極性潜時の平均のほうが,成人群よりも有意に長かった(±73ms vs ±54ms).また,幼児群における双極性強度の平均は,成人群よりも有意に高かった(±45fT vs ±25fT ; femto Tesla).これらの違いは,神経系の成熟度の違いに原因があると考えられる。これらの違いがあるにもかかわらず,我々は,成人群と幼児群で同様の結果を得た.すなわち,どちらの群においても,つま先を突く動画を見たときのほうが,指を突く動画を見たときよりも,ECD強度が低くなることを発見した. IV考察及び結論:結果から,非自己のおかれている状況を視覚情報から得て,その情報がそれに類似した刺激を受けた場合,体性感覚野反応に影響を及ぼすという現象を捉えることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,これまで収集されてこなかった,3-4歳児における視触覚の脳内処理に関してデータを収集している.我々が使用できたのは,健常児のデータのうちおよそ40%のみであった.自閉症児から解釈可能なデータを得ることはさらに難しいことがわかる.しかしながら,得られた結果は,国際誌で発表するにふさわしい.論文はすでに投稿済みであり,査読済み論文の修正を行っている段階である.
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