2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591278
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
和田 有司 福井大学, 医学部, 教授 (30175153)
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Keywords | 統合失調症 / 脳イメージング / 脳波解析 / 認知機能 |
Research Abstract |
統合失調症の認知機能障害の背景にある病的基盤を明らかにするため研究をすすめているが、初年度の研究として本疾患の脳波異常に関する検討を行なった。従来の脳波研究では背景脳波の徐波化などが報告されており、我々も以前より光刺激に対する脳波反応性の低下、光駆動反応の後頭部優位性の欠如などの機能異常を報告してきた(Wada et al, 1994, 1995)。過去の研究では、線形アルゴリズムを用いたFFT法などに基づく検討が主体であったが、これに対して、今回は非線形アルゴリズムを用いた解析法であるマルチフラクタル解析を適応することで、既存の線形アルゴリズムでは困難であった微細な特徴抽出とその定量化が可能と考え、研究を実施した。対象は未治療の統合失調症患者と年齢・性別をマッチさせた健常者群で、まず安静時脳波を記録し、その機能的複雑性について両群を比較した。また患者群の一部では抗精神病薬投与後2~8週目に脳波を再度記録し、その服薬前後の変化を検討した。その結果、統合失調症の治療前の安静時脳波では,前頭葉および側頭葉におけるマルチスケールエントロピー値が健常者群と比較して高値であり、統合失調症では安静時脳波の複雑性が上昇していることが示唆された。さらに前頭葉においては、上記の異常脳波活動が抗精神病薬の投与後に改善することが示された。以上より、マルチフラクタル解析が,統合失調症における脳波活動の特徴抽出や治療効果の判定に有用である可能性が示された。今回は、患者群での症状評価尺度と脳波複雑性との相関は明らかではなかったが、今後は多症例での検討により、臨床症状を含めた認知機能障害との関連が明らかにされると考えられた。
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