2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591305
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
吉村 匡史 関西医科大学, 医学部, 講師 (10351553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 利彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (20186290)
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Keywords | 統合失調症 / 定量脳波 / 抗精神病薬 / 薬物脳波 / アリピプラゾール / sLORETA |
Research Abstract |
DSM-IV-TRにて診断された3名(症例A、B、C)の未治療妄想型統合失調症患者に対して、抗精神病薬であるアリピプラゾール(以下、APZと略す)を主剤として加療を行った。APZ投与前と投与開始約4週間後に、国際10/20法に基づいた19電極部位から、両耳朶を基準電極として安静閉眼時脳波を約5分間記録した。各々の脳波記録から、視察的にアーチファクトの混入を認めない計40秒間(20エポック)を抽出して解析に供した。解析にはsLORETAを用いた。各脳波記録のδ、θ、α1、α2、β1、β2、β3の7周波数帯域において脳内電流密度を算出し、その結果をsLORETAの正常データベースであるBRL- sLORETA Normsと比較した。BRL-sLORETA Norms(以下、健常群と表記)とは、ニューヨークのBrain Research Laboratoriesにて、16歳~81歳の健常者139名の安静閉眼時脳波をもとに構築されたデータベースである。得られた結果と本データベースとの差異はz-scoreによって示され、その絶対値が3以上の場合に有意な差が存在するとみなす。 APZ投与後、全例においてPANSS総得点の低下を認めたが、その変化率は症例A-Dにおいてそれぞれ13%、11%、53%であった。症例Aでは、投与前には右前頭部・側頭部のδ活動が健常群に比して有意に高かったが(z=4.76)、投与後にその有意性は消失した(z=2.28)。また、服用前は健常群に比べて有意に低かったβ1活動が、投与後は帯状回において有意に高くなっていた。症例Bでは、服用前後ともに、後頭部のδ活動が健常群に比して有意に高く、服用前後での差異は認めなかった。症例Cでは、投与前は健常群に比して有意に低かったθ、α1、β2活動が、投与後においては健常群との有意差の消失をみた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成23年度中に統合失調症患者および健常者各12例(累計各24例)の脳波を記録し、解析を開始する予定であったが、3例の統合失調症患者の脳波しか記録できていない。 理由として、研究協力者の都合により、統合失調症症例の選出に必要な調査が遅延していることが挙げられる。また、健常者の脳波記録が行えていないが、この理由としては、現在のところ比較対象に用いている脳波データは、新たに測定した健常者の脳波ではなく、すでに存在する健常者データベースであることが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
統合失調症症例の対象選出に向けて鋭意努力を続ける。具体的には教室員への本研究の周知を徹底することで未治療統合失調症患者が来院した際に漏らさず脳波測定を行えるようにすることに加え、関連の現在はまだ予備的な解析を行っている段階であるため前述の健常者データベースとの比較を行っているが、今後は関連の医療機関に対しても症例提供の呼びかけを行うことを検討する。また、本研究で解析手法として用いるLORETA法の開発者であるRoberto D. Pascual-Marqui博士(滋賀医科大学,チューリヒ大学KEY研究所)を定期的に本学へ招き、LORETA法についての講義や実習を受けることとした。LORETA法は、頭皮上より測定した脳波から脳内の電気活動を三次元的に推定する手法であり、1994年にPascual-Marqui博士が報告して以降300件以上の論文において用いられている。頭皮上脳波から脳内電気活動を観察しうるという点は画期的であり、広く用いられている手法であることから、本研究で得られた結果を他の研究と比較検討できる機会も多い。従来、脳機能を三次元的に観察する手法としてはMRIなどの神経画像検査が中心であったが、本研究では、簡便さや侵襲の低さが特徴である脳波を用いて脳機能を三次元的に捉えようとしている。この解析手法に習熟することは本研究の遂行において必須と考えられる。
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