2010 Fiscal Year Annual Research Report
膵がん由来細胞株が示すX線と重粒子線による浸潤能増強/抑制機構の分子生物学的解析
Project/Area Number |
22591394
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
今井 高志 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, グループリーダー (50183009)
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Keywords | 浸潤 / 転移 / 放射線 / マトリックスメタロプロテアーゼ / 転写制御 |
Research Abstract |
本課題は、再発・転移の抑制が重要な課題となっている膵癌においてX線や重粒子線照射が細胞の浸潤能にどのような影響を与えるか、またそれはどのようなメカニズムに依るか明らかにすることを目的としている。 22年度は、まずヒト膵癌細胞株、MIAPaCa-2とPanc-1について放射線照射が細胞の浸潤能に及ぼす影響を解析した。その結果X線照射では2種類の細胞で共に浸潤が誘導されるが、重粒子線はMIAPaCa-2では浸潤抑制、Panc-1では浸潤誘導することを見出した。重粒子線照射により浸潤誘導する細胞があることの報告は初めてであり、重要である。 次にMIAPaCa-2を用いてX線照射による浸潤誘導のメカニズムについて解析を行った。MIAPaCa-2はスピンドル状形態と球状形態の2つの形態を示すが、スピンドル状形態の細胞はX線照射するとMMP-2の発現上昇と共に浸潤が増加した。この時MMP-2の活性化に関わるMMP-14の発現誘導も観られた。MMP-2,-14の発現誘導は転写レベルで調節されていることが分かった。 球状形態を示す細胞のアメーバ用浸潤を抑制するためにアクトミオシンの収縮を抑制するROCKインヒビター(ROCKI)を加えたところ細胞はスピンドル状形態に変換し、またMMP-2の発現誘導と共に浸潤する細胞数は増加した。さらにROCKI添加とX線照射を同時に行うと浸潤は相加的に誘導された。この時MMP-2の発現量は増加していた。そこでROCKIとMMP-2Iを同時添加したところ、MIAPaCa-2の浸潤はX線照射の有無に関わらず抑制することができた。これらの結果は、放射線治療時の転移の抑制には、細胞の浸潤様式を明らかにしそれに適した薬剤を選択することの重要性を示唆する。 Panc-1の重粒子線による浸潤誘導のメカニズムについては23年度解析を行う。
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