2011 Fiscal Year Annual Research Report
膵がん由来細胞株が示すX線と重粒子線による浸潤能増強/抑制機構の分子生物学的解析
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22591394
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
今井 高志 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, プログラムリーダー (50183009)
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Keywords | 浸潤 / 転移 / 放射線 / マトリックスメタロプロテアーゼ / 転写制御 |
Research Abstract |
本課題は、再発・転移の抑制が重要な課題となっている膵癌においてX線や重粒子線照射が細胞の浸潤能にどのような影響を与えるか、またそれはどのようなメカニズムか、解析することを目的としている。 22年度までにMIAPaCa-2とPANC-1細胞の浸潤能はX線照射によって共に誘導されるが、炭素線照射の場合、MIAPaCa-2では抑制され、PANC-1では誘導されることを見出した。MIAPaCa-2のX線による浸潤誘導には、MMP-2とROCKが関わっていることを示した。そこで23年度は、まずPANC-1の炭素線照射による浸潤能誘導に関わる分子の探索を行った。その結果、炭素線照射によりMMP-2ではなくプラスミノーゲン活性化因子のタンパク質量と活性が上昇し、この因子により誘導されるプラスミン活性も上昇した。また、PANC-1は細胞形態の変換が起こるタイプであったため、セリンプロテアーゼ阻害剤とROCK阻害剤を同時に加えたところ、炭素線誘導浸潤能は抑制された。このように放射線の細胞浸潤能に及ぼす影響は、細胞株、線質によって異なり、またマトリックスを分解するプロテアーゼの発現誘導も異なっていたので、当初24年度に予定していた放射線による遺伝子発現プロファイルの比較を本年度に実施し、個々の遺伝子の詳細な転写解析は次年度に行うこととした。X線4Gyあるいは炭素線2Gyを照射し、DNAアレイを用いて遺伝子発現解析を行ったところ、X線照射前後に2倍以上の発現変化を示した遺伝子はMIAPaCa-2、54個、PANC-1,8個、また炭素線照射前後で2倍以上の発現変化を示した遺伝子はそれぞれ157個と57個であった。炭素線照射でタンパク質量が増加したプラスミノーゲン活性化因子はPANC-1においてのみmRNAレベルでの誘導が見られ、誘導率は炭素線照射の方がX線照射より高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PANC-1細胞の炭素線浸潤能誘導に関わる分子としてプラスミノーゲン活性化因子とROCKを同定し論文発表した。またDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析によって、X線と炭素線に特異的な遺伝子発現プロファイルを検出し、PANC-1細胞において炭素線特異的に発現する遺伝子の中に、プラスミノーゲン活性化因子があることを見出したことは大変意味がある。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線の細胞浸潤能に及ぼす影響は、細胞株、線質によって異なり、特にマトリックスを分解するプロテアーゼの発現も細胞株、線質によって異なっていたので、当初24年度に予定していた放射線による遺伝子発現プロファイルの比較を23年度に実施し、遺伝子発現プロファイルの全体像を把握しておくこととし、その成果は得た。24年度に鍵となる遺伝子の選択と詳細な解析を行う。
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