2011 Fiscal Year Annual Research Report
HLA-Gの移植免疫における機能についてー急増する報告の検証ー
Project/Area Number |
22591413
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
石谷 昭子 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (40112544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
王寺 典子(下嶋典子) 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30398432)
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Keywords | HLA-G / 移植 / 移植片生着 / 可溶性HLA-G / 腎移植 / 肝移植 / 造血幹細胞移植 |
Research Abstract |
HLA-GはGeraghtyらにより発見された非古典的HLAクラス1遺伝子の一つで多型性が著しく乏しい(Proc Natl Acad Sci USA, 1987)。また、HLA-G分子は胎盤トロホブラストに発現し、免疫担当細胞の表面に発現するILT2/ILT4やKIR2DL4などへの結合を介してNK細胞やCD8陽性T細胞の増殖応答や細胞傷害活性を抑制することが知られており、免疫抑制能をもつと考えられている。このことから、癌免疫や移植免疫等に応用できないかと期待されてきた。体外受精分野においても期待され、Fuzziらが体外受精卵の培養液中にHLA-Gを分泌していない胚は着床しないと報告した( Eur J Immunol 2002)が、申請者らはこれの追試を行い、彼らの方法では、HLA-Gを検出できないことを示した (Sageshima et al. J Reprod Immunol, 2007)。 近年、各種臓器移植において、移植片の生着とHLA-Gの発現が相関しており、将来これが治療に応用できるという報告が急増している。体外受精分野での報告同様、その測定法についても検証が必要であると考え、本研究を計画した。これまでに、腎移植52例、肝移植35例、造血幹細胞移植35例を追加し、移植前後の各日程(移植前日、移植後1日目、以降1週間~2週間おきに、1~3カ月。以降1カ月おきに6カ月~3年間)について、HLA-Gの発現解析を行ったが、昨年度と同様、現時点では、移植片生着の有無に関わらず移植後患者末梢血中にはHLA-G抗原やHLA-G陽性細胞が検出され、移植片生着とHLA-G発現の有無について有意さは認められなかった。今後は、症例数を増やしながら長期観察を行うとともに、HLA-G陽性細胞について詳細に解析を行い、HLA-Gが移植医療に使用可能であるかを検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.検体数が少ないため、統計学的解析が不十分である。(肝移植、造血幹細胞移植において当初の予定の50件に達していない。) 2.長期(移植後1年以上)観察しえた検体数が少ないこと(3件のみ)。 3.HLA-Gが末梢血中T細胞に発現していること、末梢血中に可溶性HLA-G抗原を検出したが、これらにおけるHLA-Gのタンパク解析が不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
検体採取を継続して行い、検体数を増やすと共に、移植後1年以上経過した検体についても採取を行う。採取した検体については、これまで通り、フローサイトメトリーにより末梢血単核球におけるHLA-G発現解析および末梢血中可溶性HLA-G抗原の検出を行い、データを蓄積する。同時に、末梢血中のHLA-G陽性細胞および、末梢血中のHLA-G抗原についてHLA-G抗原のタンパク分離・同定を試みる。以上の結果、HLA-G抗原を分離・同定できた場合には、改めて移植片生着とHLA-G発現の相関解析を行い、HLA-Gが移植医療に使用可能であるかを検証する。HLA-G抗原を分離・同定・検出できなかった場合には、これまでの報告でHLA-Gが陽性であると判定されるに至った原因を明らかにする一方、その分子と移植医療との関連を検討する。
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Research Products
(2 results)