Research Abstract |
アロマターゼはアンドロゲンをエストロゲンに変換することから,乳癌の分化・進展に大きく関わる重要な酵素であり,近年では重要な治療ターゲットとなった.一方で,アンドロゲン受容体(AR)は乳癌に発現していることが分かっているものの,乳癌にとって増殖傾向に働くのか抑制傾向に働くのか,その影響は明らかではない. 実験1:乳癌組織におけるARとアロマターゼの発現解析を行った.乳癌手術症例78例から乳癌手術時に新鮮な検体を取得し,mRNAを抽出後,real-time RT-PCR法にて定量した.乳癌におけるARの発現と臨床病理学的因子(ER,PgR,HER2,年齢,腫瘍径,核異型度,リンパ節転移の有無,脈管侵襲の程度など)と比較検討したが,特に傾向は認めなかった.アロマターゼの発現量とも特に相関は認めなかった.そのため,ARに関する実験は一次打ち切りとした.実験2:グルココルチコイド受容体(GR)もARと同様な核内ホルモン受容体であり,乳癌における発現が確認されている.GRに関して同様にmRNAの測定を行ったところアロマターゼの発現との間に正の相関関係を認めた.また,既に作成してあるアロマターゼプロモーター1.4のルシフェラーゼ発現ベクターを用いてレポータージーンアッセイを行ったところ,GRの発現はROR発現とともに著名な相乗効果を認めた。相乗効果の原理に関しては解析不十分であり今後の課題である.その途中過程において,我々のレポータージーンアッセイでの結果では,従来報告されたグルココルチコイド応答領域と異なる位置でグルココルチコイドの応答性を認めている
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