2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗体デリバリーを規定する腫瘍側生物学的抵抗因子の解析
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22591447
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
安永 正浩 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, 室長 (80450576)
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Keywords | 抗体 / 抗体デリバリー / in vivoイメージング / DDS / 間質バリア / 抗体インタナリゼーション / 膵臓がん / 悪性リンパ腫 |
Research Abstract |
本研究は、(1)細胞内抗体インターナリゼーション(2)血管多寡・透過性(3)間質バリアという、抗体デリバリーに影響を与えると思われる腫瘍側生物学的因子についてがん種別に比較検討することで、その特性を明らかにしようというものである。昨年度まで、乳がん株(MCF7、T47D)、肺がん株(A549、H1975、H23等)、大腸がん株(HT29、DLD1等)、膵臓がん株、(SUIT2、CAPAN等)、悪性リンパ種株(RL、Ramos)についてXenograftモデルを作成して、組織コンポーネンの違いを比較検討した。膵臓がん株(SUIT2、CAPAN)腫瘍では、血管が少なくがん細胞はコラーゲンを中心とする厚い間質で囲まれていた。一方、悪性リンパ腫株(RL、Ramos)腫瘍では細胞成分と血管が豊富で、腫瘍細胞を取り囲む繊維性の間質成分はほとんど認めなかった。そこで本年度は、間質豊富で血管の少ない膵臓がんモデルと間質が少なく血管の多い悪性リンパ腫モデルに、蛍光標識した抗体を投与して腫瘍内のデリバリー効果の違いを比較検討した。非特異抗体と特異抗体共に、EPR(Enhanced pemeability and retention)効果により、投与後3日目まで強い腫瘍集積作用を認めた。7日目には、非特異抗体は腫瘍部から消失していたが、特異抗体はアクティブ・ターゲッティング作用により腫瘍への強い集積性が継続していた。また、腫瘍内組織浸透性には両モデルで大きな差があった。悪性リンパ種モデルでは、特異抗体は血管から漏出後に腫瘍全体に均一に浸透していたが、膵臓がんモデルでは、血管周囲の間質には存在するものの浸透性が制限されており、がん細胞に到達したものは少なかった。この結果、がん細胞を取り囲む豊富な間質成分による間質バリアが抗体デリバリーを規定する重要な生物学的抵抗因子になることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗体デリバリーを規定する腫瘍側生物学的因子の中でも、間質バリアについて、病理組織的解析とin vivoイメージングを用いた解析結果から、その重要性を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、細胞外因子としての間質バリアに加え、細胞そのものに関連した因子としての抗体インタナリゼーションが、抗体デリバリーに与える影響について、詳細に検討する予定である。抗体・抗がん剤複合体のドラッグデザイン作製用に有益となる成果及び情報の提供を目指している。
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