2011 Fiscal Year Annual Research Report
FGFR2IIIcアイソフォームの制御による膵臓癌の治療戦略
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22591531
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
石渡 俊行 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90203041)
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Keywords | 細胞増殖因子受容体 / FGFR2IIIc / siRNA / 選択的スプライシング / ESRP1 / 癌幹細胞 |
Research Abstract |
FGFR2の選択的スプライシングアイソフォームのFGFR2IIIcは、正常組織では主に間葉系細胞に発現している。ヒト膵癌症例の約70%にFGFR2IIIcの発現がみられ、FGFR2IIIc陽性症例では、術後の肝転移の出現までの期間が有意に短いことが明らかとなった。FGFR2IIIc遺伝子発現ベクターを、膵臓癌培養細胞に遺伝子導入し安定過剰発現細胞を作成したところ、in vitroでの細胞増殖能の亢進がみられ、マウスの皮下移植モデルと同所移植モデルにおいて対照群と比べ腫瘍の大きさの増大がみられた。細胞内のシグナル伝達系について検討するため、FGF-2をFGFR2IIIc過剰発現細胞に投与したところ、ERKのリン酸化の亢進がみられた。さらに、癌幹細胞とFGFR2IIIcの関係を検討したところ、FGFR2IIIc過剰発現細胞ではsphereの形成能が亢進し、フローサイトメトリーでの検討でside population細胞の増加がみられFGFR2IIIcと癌幹細胞との関係が明らかとなった。一方、FGFR2IIIcに対するsiRNAを作成し、膵癌培養細胞に導入したところ、細胞増殖の抑制が認められた。さらにFGFR2IIIcに対するポリクローナル抗体を作成し、PANC-1細胞に投与したところ、用量依存性に増殖抑制効果が認められ、細胞の遊走能も抑制された。FGFR2IIIbへのスプライシングを促進させるepithelial splicing regulatory protein(ESRP)1の膵癌細胞での発現を抑制することでFGFR2IIIcの発現が亢進し、増殖能、遊走能および浸潤能が亢進した。これらの結果より、FGFR2IIIcが膵臓癌の新たな治療標的となる可能性が示唆された。今後、FGFR2IIIcのin vivoでの抑制方法などについて、検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FGFR2IIIcの膵癌での発現と、その役割を明らかにするとともに、癌幹細胞との関連も解明することができた。FGFR2IIIcを抑制することで、治療に繋がる可能性があることから、今後の動物実験を行う意義が明瞭となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、膵癌に発現しているFGFR2IIIcの作用を効果的に抑制する方法を検討するため、膵癌細胞を移植したマウスに対して、FGFR2IIIcのsiRNAやヒト型のモノクローナル抗体の投与などを行う。
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Research Products
(10 results)