2011 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性脊髄障害に対するエピジェネティック的治療戦略
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22591548
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
斎川 仁子 琉球大学, 医学研究科, 助教 (20404569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣花 学 国立大学法人琉球大学, 医学研究科, 准教授 (20274897)
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Keywords | 虚血性脊髄障害 / 対麻痺 / エピジェネティクス / ヒストン脱アセチル化酵素 / アポトーシス / 脊髄運動神経細胞 |
Research Abstract |
【具体的内容】 マウス大動脈遮断モデルを用いヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(HDAC)による虚血性脊髄障害への効果について、HDAC投与の時期を変化させ検討した。全身麻酔下に大動脈弓部を5分間遮断し脊髄虚血モデルを作成した。このモデルは虚血後24時間では歩行可能であるにもかかわらず48時間目には全てのマウスが対麻痺となる遅発性対麻痺モデルである。HDAC法は、虚血7日前(HDAC 7群)、3日前(HDAC 3群)、前日(HDAC 1群)にHDACを腹腔内投与した。非治療群(C群)はDMSOを腹腔内投与とした。その結果、C群では10匹中10匹が48時間後に遅発性対麻痺を発症したが、HDAC7群およびHDAC 3群では8匹中8匹で対麻痺を認めた。HDCA1群では8匹中7匹で対麻痺を来し、1匹は再灌流後死亡した。病理組織学的検討では、HDAC群では虚血後48時間目に脊髄前角に空砲を伴う運動神経細胞損傷が認められた。さらに、活性型カスパーゼ3に対する免疫染色では、両群で虚血後30時間目から脊髄運動神経細胞が活性型カスパーゼ3陽性となり、アポトーシスの指標であるTUNNEL染色でも陽性であった。さらに対麻痺脊髄において、グリア細胞(活性型マイクログリア、活性型アストロサイト)の集積が認められた。 【意義および重要性】 本年度の研究結果では、HDACを腹腔内投与させたが運動機能、病理組織にその予後を改善することは認められなかった。また、活性型カスパーゼ3発現も抑制されていないことから、今回の投与方法ではHDACによる神経細胞アポトーシスを抑制する可能性は少ないと考えられた。今後、HDACの至適投与量について研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス遅発性脊髄障害モデルを用いヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の脊髄神経細胞保護効果について検討しているが、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の毒性により十分な用量を投与できていない。現時点では、高用量投与ではなく、少量を複数回投与することによりヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の毒性を減弱させた実験を行っている。しかし、本年度の結果からそれによる神経細胞保護効果は認められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
脳梗塞モデルにおけるヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の神経細胞保護効果は認められているにもかかわらず、マウス遅発性脊髄障害モデルを用いピストン脱アセチル化酵素阻害薬の脊髄神経細胞保護効果が現時点では認められていない。これは脳梗塞による神経細胞のメカニズムとは異なり、脊髄では活性型マイクログリアによる炎症反応が大きく関わっていると推測できる。今後は、培養神経細胞を用いて低酸素負荷を行いその効果を確認する予定である。
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Research Products
(1 results)