2011 Fiscal Year Annual Research Report
リアルタイム細胞分子動態解析法による肺がんの低酸素バイオロジーの解明
Project/Area Number |
22591567
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮田 義浩 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (50397965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 守人 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70446045)
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Keywords | 肺がん / 質量分析 |
Research Abstract |
本研究は細胞分子動態解析法による質量分析を用いて、低酸素や抗癌剤治療により肺癌細胞内で起こるFDG(fluoro-2-deoxy-D-glucose)の蓄積を観察し、肺癌の悪性度評価に対するFDG-PETの可能性を明らかにすることを目的とする。肺腺癌70例,扁平上皮癌24例,計94例を対象とし、免疫組織化学的染色を行い、低酸素環境下に誘導されるHIF-1,Glut-1発現を定量的に示した。HIF-1,Glut-1発現とSUVmax、脈管浸潤、リンパ節転移、再発率は、腺癌症例にて相関が認められたが、扁平上皮癌では有意な相関は認められなかった。非小細胞肺癌,特に腺癌において低酸素環境下に誘導されるHIF-1,Glut-1発現は腫瘍の増殖能、悪性度の強力な指標となることが示唆された。また癌細胞内での低分子物質の変化を観察するため、まず5-FU感受性が異なる2種類のヒト癌細胞株に5-FUを曝露したのち経時的に細胞を回収し、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)を用いて、細胞内の低分子動態を一斉解析した。ヒト癌細胞株の分析結果よりm/z50~1000の範囲で約7000個のピークを検出できた。そのうち特定のアミノ酸代謝と脂質代謝は2種の細胞株間で特徴的な動態を示した。これらの代謝を媒介する酵素に対してRT-PCRを行い、発現量を解析した。細胞分子動態解析法による質量分析を用いたメタボローム解析によりヒト癌細胞株の5-FU曝露による細胞内応答を追跡することが可能であった。5-FUの作用には特定のアミノ酸代謝と脂質代謝が特徴的であり、薬剤耐性に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床データ、培養細胞を用いて順調に研究が進んでいる。しかし細胞内でのFDG代謝物質の測定は、イオン化しにくい物質でありやや難渋している。
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Strategy for Future Research Activity |
癌組織内低酸素応答を質量分析や免疫染色で観察することにより、肺がんの低酸素応答を観察してゆく。培養細胞内FDG代謝物質の直接測定は、従来の質量分析法ではやや困難であるため、癌細胞のメタボロームを網羅的に解析することにより低酸素に対する応答を観察してゆく予定である。
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