2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期同調下のプレローディングによる中性子捕捉療法(BNCT)の確立
Project/Area Number |
22591604
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 哲哉 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30375505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 明 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241819)
中井 啓 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50436284)
吉田 文代 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30261811)
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Keywords | 中性子捕捉療法 / BPA / ホウ素 |
Research Abstract |
Glioblastoma(GBM)は最も悪性度の高い原発脳腫瘍であり、その治療法の1つとしてホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)が期待されている。がん(腫瘍)細胞にホウ素化合物(Boronophenylalanine:BPA)が取り込まれた状態で外部から熱中性子が照射されると、α線と^7Li反跳核が生成され、腫瘍細胞に限局した10μm程度の領域に抗腫瘍効果を示す。このBNCTで強力な腫瘍選択的効果を得るためには、BPAを効率的に腫瘍細胞に取り込ませることが重要となる。 本研究では、細胞周期同調後、BPAやその類似構造物質(L-tyrosine・L-DOPA)を事前投与(プレローディング)することによってアミノ酸交換輸送の速度増加を誘導し、引き続いてBPAを投与して細胞内ホウ素濃度を最大限に上昇させることでBNCTの最大効果を得るための条件を明らかにする。 H23年度までの研究では、グリオーマ細胞株に対し、L-DOPAのプレローディングの有無による細胞内ホウ素濃度を検討した。L-DOPAのプレローディング後に投与時間を変化させてBPAを投与した結果、L-DOPAをプレローディングしない場合に比べ、細胞内ホウ素濃度はBPA投与初期から有意な上昇を認めた。本手法による細胞内ホウ素濃度上昇の作用機序(細胞内への取り込み機序)は明らかにされていないことから、その輸送複合体であるLAT1と4F2hcの遺伝子発現に注目し、発現解析を実施した。その結果、L-DOPAのプレローディングの有無における遺伝子発現の変化に有意差は認められなかった。BNCTは非常に予後不良の悪性腫瘍に対し治療効果が期待できる治療法である。BPAを効率的に腫瘍細胞に取り込ませることによる有効なBNCTの確立に向け、さらなる条件の適正化と作用機序の解明に向けて研究を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
L-DOPAのプレローディングにより、細胞内ホウ素濃度が上昇することが本研究で実証されている。その作用機序(細胞内への取り込み機序)に関してはさらなる検討が必要であるが、本手法によりBNCTの治療効果を改善できる可能性は高く、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
L-DOPAのプレローディングによって細胞内ホウ素濃度は上昇しているが、我々が目標としている細胞内ホウ素濃度までには達していない。そのため、細胞内ホウ素濃度をさらに上昇させる条件付けが必要であると考えている。そこで、BPAやL-DOPAの濃度や取り込み時間を詳細に検討し、細胞内ホウ素濃度が最大に達する投与条件の最適化を検討する。その際、最適な中性子照射のタイミングを含めた条件付けを行うこととする。また、作用機序(細胞内への取り込み機序)を明らかにするため、遺伝子発現の再解析を行う予定である。
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