2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳内移植モデルを用いたリンパ腫の浸潤機構の解明と新規治療の考案
Project/Area Number |
22591615
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
牧野 敬史 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (90381011)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉津 純一 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (20145296)
中村 英夫 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (30359963)
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40421820)
|
Keywords | 悪性リンパ腫 / 動物モデル / 浸潤 / 中枢神経 / eIF4E / α2,6-sialyltransferase |
Research Abstract |
本研究では脳原発悪性リンパ腫の病態を解明し、既存の治療に対する耐性の克服、さらに病態解明に基づいた新規治療法の開発により、治療成績および治療後のQOL改善を目的としている。まずリンパ腫の細胞死の抑制や増殖に関わる分子として、転写開始因子であるeukaryotic initiation factor 4E(eIF4F)に着目した。この分子は、脳原発リンパ腫症例の腫瘍サンプルにおいて高発現がみられ、培養細胞株(HKBML)において、eIF4Eの活性を制御するMNK1キナーゼの阻害剤により増殖抑制および細胞死が誘導された。さらに免疫不全マウスの皮下にHKBML細胞を移植した皮下腫瘍モデルにおいても増殖抑制効果があることを明らかにし、報告した(Muta D.J Neurooncol. 2011)。次に悪性リンパ腫の生物学的特徴である脳内へ広範囲に浸潤することに着目した。細胞の浸潤にはまず組織への定着が必要であり、細胞表面の接着分子およびその制御分子が重要である。CD22はB細胞リンパ球の表面抗原であり、細胞の活性化、組織への接着などの機能を持ち、B細胞性リンパ腫のマーカーにもなっている。CD22を介した接着は、α2,6-sialyltransferaseによるシアリル化により制御される。またα2,6-sialyltransferaseは乳がん細胞においては血液脳関門の透過性を亢進させ、細胞が脳内に浸潤することに関与することも報告されている。そこでα2,6-sialyltransferaseが、リンパ腫の脳内への浸潤にも関与する可能性を考え、組織での発現を解析した。生検術を施行し、B細胞性リンパ腫と診断した脳原発リンパ腫25例、全身性リンパ腫の脳内浸潤9例を抗2,6-sialyltransferase抗体を用いて免疫組織染色を行ったところ、α2,6-sialyltransferaseは、脳原発リンパ腫25例中23例、全身性リンパ腫脳内浸潤9例すべてに陽性であった。この結果は、日本脳腫瘍病理学会にて報告した。
|