2010 Fiscal Year Annual Research Report
症候性ラトケ嚢胞の増大機序における炎症性サイトカインとアクアポリンの関与
Project/Area Number |
22591622
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
立花 修 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40211362)
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Keywords | ラトケ嚢胞 / サイトカイン / アクアポリン / 炎症 |
Research Abstract |
症候性ラトケ嚢胞の嚢胞増大機序を解明し、治療法の開発の基盤を確立するために、嚢胞分泌液におけるサイトカイン、ムチン蛋白の発現とその意味について臨床病理学的検討した。 【対象と方法】症候性ラトケ嚢胞20例を対象にMRIで信号域と大きさを測定し、内分泌機能評価をおこなった。また、嚢胞内容液の各種サイトカイン(IL1α, IL-1β, IL2, IL6, IL12, TNFα)および蛋白、HCGb、コレステロールの発現を、嚢胞内容液と病理組織のおいて定量し、免疫組織化学的および臨床理学的に検討した。5例においてはプロテオーム解析をおこなった。【結果】1.臨床的特徴:男性7例、女性14例で1:2と女性に多く、平均年齢は52歳、腫瘍径は平均21mmであった。T1で高信号のものが蛋白濃度が有意に高かった(p<0.001)。2.嚢胞内容液のプロテオーム解析では、サイトカインとして、IL1b precursor、IL-6、IL-12p40、TNFaの炎症性サイトカインを同定した。3.嚢胞内容液では、測定しえた症例の大部分でIL-6(6682pg/ml)とIL-1b(155.63pg/ml)を高濃度に認めた。4.下垂体前葉機能低下症をきたしたものが14例(66%)にみられ、病理標本ではラトケ上皮や前葉に炎症細胞浸潤を認めた。嚢法内容液のIL-6が、機能不全をきたした症例で有意に高い傾向を示した(p=0.05)。5.病理学的に慢性炎症を伴う症例では、TNFaやIL-6が嚢胞上皮に発現していた。【考察】ラトケ嚢胞は炎症性サイトカインを産生分泌することにより、下垂体炎を誘発する可能性が高い。現時点では不可逆的な下垂体機能不全に陥る前に手術で摘出することが推奨される。抗炎症剤の投与が効果をもたらす可能性も高い。今後、計画に従い、嚢胞増大の機序を解き明かす予定である。
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