2011 Fiscal Year Annual Research Report
症候性ラトケ嚢胞の増大機序における炎症性サイトカインとアクアポリンの関与
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22591622
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
立花 修 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40211362)
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Keywords | ラトケ嚢胞 / サイトカイン / アクアポリン / 炎症 |
Research Abstract |
症候性ラトケ嚢胞の嚢胞増大機序を解明し治療法の開発の基盤を確立するため、嚢胞分泌液におけるサイトカイン、ムチン蛋白の発現とその意味について臨床病理学的検討した。 【対象と方法】症候性ラトケ嚢胞25例を対象に臨床病理学的、放射線学的、および内分泌学的評価をおこなった。また、嚢胞内容液の各種炎症性サイトカインおよび蛋白、HCGb、コレステロール、アクアポリン、HCGb、GnRH、GnRHRの発現を、嚢胞液測定と病理組織のおいて免疫組織化学的に検討した。【結果】1.臨床的特徴:男性7例、女性18例と女性に多く、平均年齢は52.12歳、腫瘍径は平均21.5mmであった。T1で高信号のものが蛋白濃度が有意に高かったが(p<0.001)、下垂体機能障害との相関関係はなかった。2.嚢胞内容液では、大部分でIL-6とIL-1bを高濃度に認めた。3.下垂体前葉機能低下症をきたしたものが18例(72%)にみられ、病理標本ではラトケ上皮や前葉に炎症細胞浸潤を認め、半数以上の症例で慢性期の炎症変化がみられた。嚢法内容液のIL-6が、機能不全をきたした症例で有意に高い傾向を示した(p=0.05)。5.病理学的に慢性炎症を伴う症例では、TNFaやIL-6が嚢胞上皮に発現していた。アクアポリンは下垂体前葉細胞に発現し、一部のラトケ嚢胞上皮にも発現が見られた。HCGbはラトケ上皮や下垂体中間葉嚢胞周囲細胞、頭蓋咽頭腫に発現が見られた。MIB1はラトケ上皮にはほとんど認めなかった。【考察】ラトケ嚢胞は中間葉嚢胞周囲細胞や頭蓋咽頭腫と同一のlinkageを有し、トルコ鞍、下垂体の閉じられた空間で、繰り返し炎症性サイトカインを含む分泌液の産生、吸収をおこなうことにより、下垂体前葉に慢性炎症を引き起こしている可能性が高い。今後、計画に従い、嚢胞増大、縮小の機序を解き明かす予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.当初予測した症例数に臨床例が足りていない(約60%)。 2.培養条件が一定化せず計測値に影響を与えている。 3.一部の抗体において、免疫染色状況が一定化しない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.症例数は年によって増減があるため、今までどおりに丁寧に説明し治療をおこなっていく。 2.培地を工夫する。短い期間(5日以内)で測定する。In vitroでのラトケ上皮細胞への炎症刺激、抑制実験は今回は見合わせることにした。 3.免疫染色については抗原賦活条件、pH、温度、希釈をととのえていく。
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