2011 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴシン1-リン酸受容体を標的とした新しい脊髄損傷の治療法の開発
Project/Area Number |
22591641
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
木村 敦 自治医科大学, 医学部, 助教 (20364507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 司 自治医科大学, 医学部, 講師 (70382843)
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Keywords | 脊髄損傷 / スフィンゴシン1-リン酸 / 生理活性脂質 |
Research Abstract |
スフィンゴシン1-リン酸(S1P)は,生体内で5つの特異的受容体(S1P_1-S1P_5)を介して多彩な作用を発揮する生理活性脂質である.最近S1P受容体作動薬であるFTY720が強力な免疫抑制剤作用を持つことが注目されており,中枢神経疾患では難治性の多発性硬化症患者に対する治療効果が報告されている.本研究の目的は,FTY720の脊髄損傷に対する効果を,マウス脊髄損傷モデルを用いて検討することである. まず定量的な損傷を加えた脊髄損傷マウスを作成し,FTY720を連日経口投与した.FTY720投与群はコントロール群に比較して,2種類の後肢運動機能評価(BMS scaleとロータロッドテスト)において,損傷後1週目以降に有意に高い機能を示すことが確認できた.また組織学的にも,FTY720投与群における残存ミエリンの面積は有意に大きく,アストログリア療痕の範囲は有意に減少しており,FTY720による損傷脊髄組織に対する保護作用も確認できた.さらに損傷脊髄への炎症細胞浸潤をフローサイトメトリーで分析すると,FTY720投与群においてはTリンパ球,Bリンパ球の浸潤が有意に減少していた. こうした脊髄損傷組織に対するFTY720の作用が,単に免疫抑制による2次損傷抑制によるものかどうかを確認するために,リンパ球欠損マウスであるSCIDマウスにおいても同様の実験を行った.その結果,FTY720の治療効果はわずかに減少したものの,SCIDマウスにおいても依然として有意な機能回復促進機能が維持されていた. こうしたFTY720のリンパ球減少を介さない作用機序を検討する目的で,脊髄における炎症性サイトカインの発現,損傷部の出血量,および血管透過性の変化を調査したところ,血管透過性のみがFTY720投与分で有意に減少することが判明した.以上の結果は,FTY720の脊髄損傷に対する作用機序として,血管透過性の抑制が重要であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の大半を達成し,研究成果が国際的科学誌に掲載された.
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Strategy for Future Research Activity |
さらに詳細な組織学的検討を行い,FTY720が血管透過性の抑制以外に直接的な神経保護作用を有するかどうか検討する.
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Research Products
(2 results)