2011 Fiscal Year Annual Research Report
凝固線溶マーカーと抗Xa活性モニタリングによる術後静脈血栓症の選択的予防法の確立
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22591666
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
稲葉 裕 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (40336574)
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Keywords | 静脈血栓症 / 予防法 / 人工関節置換術 |
Research Abstract |
まず、初回人工股関節全置換術(THA)170例に対して複数の血液凝固線溶系マーカーを測定し、術後静脈血栓塞栓症(VTE)発生の高リスク症例のスクリーニングに対する有用性を検討した。血液凝固線溶系マーカーは、Dダイマー、可溶性フィブリン(SF)、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、プラスミノーゲンアクチベータインヒビター(PAI-1)を術後1,3,7,14日目に測定し、VTEの有無は、術後1週での造影MDCTにより評価した。その結果、術後1日目のSFとPAI-1の値が術後1週でのVTE発生と最も関連した。ROC解析によるカットオフ値は、SFが19.8μg/ml、PAI-1は56ng/mlであり、両者のカットオフ値を用いた判別は感度100%、特異度67%であった。つまり、術後1日目のSFとPAI-1の2つのカットオフ値を用いれば術後VTE発生のスクリーニングが可能である。 次に、この基準に準じて術後VTE発生のリスクが高い症例をスクリーニングし、選択的な薬物的予防法を初回THA47例に施行した。47例のうち、SFかPAI-1の値がカットオフ値よりも高値で薬物的予防法を施行した症例は28例で、SF,PAI-1ともにカットオフ値以下で理学的予防法のみを行なったのは19例であった。このうちVTEの発生は、理学的予防法を行なった群では認めず、薬物的予防法を行なった群の1例(3.6%)でみられた。またmajor bleedingは、薬物的予防法を行なった群では認めず、理学的予防法を行なった群で1例認めたが、他家血輸血を要した症例はなかった。 現在、まだ症例数が47例と少ないため、症例数を増やして、さらに検討を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、目的とする選択的予防法を開始した段階であり、今後、症例数を増やして、その効果を検証する段階であり、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
選択的予防法の効果を検証するために、このまま研究を続行していく。今年度中には、目標とする100例について選択的予防法を実施する。
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