2011 Fiscal Year Annual Research Report
再生医療技術を用いた同種骨移植の再活性化に関する研究
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22591669
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤間 保晶 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (60448777)
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
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Keywords | allograft / mesenchymal cel / hydroxyapatite / tri-calcium phosphate / irradiation / osteogenesis / tissue engineering / angiogenesis |
Research Abstract |
自家骨移植が困難な症例(巨大骨欠損骨腫瘍・外傷、小児等)を想定した保存同種骨、殺細胞同種骨、殺細胞自家骨の臨床応用をターゲットに検討している。これらの骨移植は同じ骨移植の中でも骨形成能が顕著に乏しい。そこで、我々はこれまでに同種骨移植を想定した実験モデルを確立し検討した。Fischer 344ラット(F344)より骨髄細胞を採取、培養により間葉系細胞を獲得した。移植骨には同種骨移植を想定してACIラット(ACI)の大腿骨を用いた。その移植同種骨にF344由来の培養骨髄由来の間葉系細胞を搭載し、F344に移植して、移植後の骨形成能を評価した。移植骨の免疫原性、滅菌対策としてscaffordとなるACI大腿骨には放射線60Gy一括照射を施した。その結果、生化学的、分子生物学的、組織学的評価より、培養により獲得した骨髄由来間葉系細胞を搭載することで同種処理骨に骨形成能が付与することが確認された。 しかし、その骨形成能には個体間に較差が認められ、必ずしも安定した骨形成能が付与できてはいない。そこで、現在、我々は骨形成能を安定化する手法として、薬剤投与を考えた。薬剤にはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤を選択した。PARP活性化による細胞死とその病態については糖尿病、虚血性疾患等の多くの疾患で報告されている。そのメカニズムは各方面で研究されており、PARP阻害剤の投与により再生遺伝子(Reg gene)が誘導され、Reg蛋白質-Reg受容体系による種々の細胞・組織の再生が確認されている。我々はReg蛋白質-Reg受容体系による血管組織再生に着目し、PARP阻害剤投与による骨形成能の低下した骨移植モデルでの血管新生・骨形成について検討を開始した。 実験には、これまでのモデルを用い、培養細胞を搭載した移植骨をレシピエントに移植する際に、レシピエントにPARP阻害剤を充填した持続注入浸透圧ポンプを移植し、2週間に渡るPARP阻害剤の投与を行った。その結果、PARP阻害剤の投与により検討数は少ないが血管新生能および骨形成能が改善される傾向を認めている。現在、検討数を増やし、この事象の再現性を確認している。また、scaffoldによるバイアスを除去する為にハイドロキシアパタイトやβTCP(tri-calcium phosphate)を用いて検討することも開始した。この検討はPARP阻害剤の標的組織を検討する研究も兼ねている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の仮説に基づいた動物実験に於いて、放射線照射による処理を行った同種骨に、培養技術により獲得した自家骨髄由来間葉系細胞を移植することで、骨形成能を付与できるという事象が確認できたことが非常に大きい。更に、本手技の有効性を高める薬剤投与による検討も開始された。今後に向けての課題点が明瞭に見いだされたことが今後の研究の方向性を決めるうえで非常に進展した事項でもある。
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Strategy for Future Research Activity |
再生医療技術により骨形成能の極めて低下した放射線照射処理済み同種骨に新たな骨形成能を付加できる可能性が示された。しかし、臨床に応用していくには様々な課題が残される。開発された本手法の再現性、いわゆる安定した骨形成能が獲得されないことには不確実な医療技術になる。今後、まずは本手法を確実な結果が得られる手法に改善する検討が必要であり、薬剤投与による手法、細胞接着を促進する手法について既に検討開始している。また、本手法の効果を生化学的な定量評価にて行う際には、殺細胞処理骨を用いる検討ではscaffoldとなる処理骨にバイアスがかかっている可能性が見いだされた。その点を改めるため、scaffoldを均一化を図り、既製の臨床応用にも用いられているハイドロキシアパタイトやβTCP discを用いることで対応を開始した。
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