2012 Fiscal Year Annual Research Report
再生医療技術を用いた同種骨移植の再活性化に関する研究
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22591669
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤間 保晶 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (60448777)
赤羽 学 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (40326327)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | allograft / mesenchymal cell / hydroxyapatite / tri-calcium phosphate / irradiation / osteogenesis / angiogenesis / PARP inhibitor |
Research Abstract |
この3年間の研究に於いて、放射線による殺細胞処理を施行した同種骨に再生医療技術により獲得した骨髄由来間葉系細胞を搭載させることで、著明に低下した同種骨の骨形成能を中心とする細胞活性を付与することが可能になることを証明した。しかし、付与された細胞活性には効果に較差があることも判明した。そこで、昨年度より、臨床医療を想定した動物実験モデルを作成し、レシピエント個体に薬剤(ポリADPリボースポリメラーゼ阻害剤:PARP ihibitor)を投与することで、細胞活性の向上、安定化を試みる革新的検討を開始した。この検討は臨床応用に於いては薬剤投与による骨形成の促進につながる。その結果、現在PARP inhibitor投与による骨形成能および血管形成能の改善傾向が認められている。 このPARP inhibitor投与による細胞活性改善の検討に於いては、臨床医療に用いるにあたり、薬剤の標的期間、細胞活性が向上するメカニズムについて探求する必要がある。そこで、PARP inhibitorの至適濃度や標的組織を追求するべく、移植担体にハイドロキシアパタイトとβTCPを用いて検討を開始した。移植担体に人工骨を用いた理由として、これまでの放射線照射同種骨は実験者の手技により作成されるもので、質的・量的にバイアスがかかることが想定される。細胞活性の評価にはmRNA遺伝子発現を中心に微量な活性変化を測定する必要があり、移植担体の均一性という観点から人工的に製造された人工骨を採用した。その結果、ハイドロキシアパタイトを用いた検証に於いても、骨形成能および血管新生能の改善傾向が認められた。しかし、βTCPに関しては、改善を積極的に示唆する傾向は得られないでいる。βTCPは臨床で汎用され、同手法の導入が期待される材料であることから、細胞接着の観点から細胞接着促進薬剤を用いた検討をも開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
再生医療技術を用いることでの放射線照射同種骨に骨形成能を付与する技術を研究前半で開発することができた。また、その際に問題点として考えられた付与された骨形成能の較差、不安定性は、当初、我々が研究後半の目標に掲げた本手技の有効性を更に高める手法の開発と関連する検討項目でもあり、薬剤を用いた検討を予定通りに開始することができた。その薬剤投与による骨形成能の検討に於いては、血管形成能の検討も併せて行えており、また、薬剤の標的器官を検証するために各種移植担体(殺細胞同種骨、各種人工骨)を用いた検討をも開始した点、更には新たに細胞接着の観点から検討を開始した点を考えると、計画以上の展開であるとも云えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、放射線照射による殺細胞処理を施行した同種骨の低下した細胞活性を、再生医療技術を用いて改善するという本手法の問題点を検証し、克服することを課題とする。臨床応用するにあたり、医療手技には安定した一定の効果が必須である。そこで、最終年度となる本年は、よりヒトに近い中型動物(日本白色家兎)を用いて、同法の再現性を検証することを考慮していたが、それに先立ち、本手法を確実な結果が得られる手技に改良することを念頭にした研究を優先的に行う。 その研究手法は前年度からの検証を踏襲する。現在、既に薬剤(PARP inhibitor)の標的器官を探求する研究をin vivo動物実験モデルを用いた研究にて開始している。標的器官が移植されたレシピエント組織なのか、或いは移植担体そのものの影響を受けるのか。また、PARP inhibitorの細胞レベルでの影響について検証することも予定する。標的器官の探求に並行し、細胞活性に至適な薬剤投与量の検討も必要であり、これらについてもin vitroでまずは検証を開始する予定である。
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