Research Abstract |
骨肉腫の転移を抑制する上で,抗癌剤単独での術前化学療法には限界が指摘されている. 我々は、Interleukin-18(IL-18)による免疫療法と抗癌剤の併用で,骨肉腫の転移抑制効果をマウス骨肉腫モデルで証明した.この併用療法の効果をさらに向上させるために,ヒストン蛋白アセチル化阻害剤(バルプロ酸)とDNAメチル化阻害剤(ヒドララジン)を用いて,ヒト骨肉腫細胞の免疫細胞に対する感受性を高める研究を行っている. 22年度に,バルプロ酸がヒト骨肉腫腫瘍細胞株に作用して,1)細胞膜NKG2D ligand (MICA,MICB)の発現を増加させる,2)遊離MICA、MICBの産生を抑制する,3)NK細胞に対する骨肉腫細胞株の感受性を亢進させることを明らかにした.本年度は,このバルプロン酸の遊離MICA,MICB産生抑制の機構を明らかにした.遊離のMICA,MICBは,細胞膜のMICA,MICBをmatrix metalloprotease(MMP)が切断することで産生される.バルプロン酸は骨肉腫のMMP-9の産生を抑制することで,遊離のMICA,MICBの産生を低下させることを証明した(論文投稿中). 23年度の予備実験では,バルプロン酸とヒドララジンの二つを併用することで,1)細胞膜Fas発現が増加してFas ligandに対する感受性が亢進する,2)遊離Fasは増加しない,3)細胞膜のMICA,MICBの発現が増加する,4)遊離MICA,MICBが減少する,5)NK細胞に対する感受性が亢進するとの結果を得た.これらの結果の確証には検体数の不十分であり,次年度の研究で一定の検体数での再検討に加え,機序の解明を行い,英文論文として投稿する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Interleukin-18(IL-18)によるヒト骨肉腫の免疫療法の効果を向上させるために,バルプロ酸とヒドララジンを用い,ヒト骨肉腫細胞の免疫細胞に対する感受性を高める研究を行った。両薬剤は,この目的に有効であることが明らかになり,その機序の解明も順調に進み,平成24年度の始めには研究成果を公表できる段階に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の目的は,バルプロン酸とヒドララジンを用いて,IL-18と抗癌剤の併用療法によるヒト骨肉腫細胞の治療効果を増強することにあった.既に,両薬剤の併用によって,IL-18の免疫療法の効果を増強させることは明らかになった.次に,両薬剤がヒト骨肉腫細胞の抗癌剤に対する感受性の増強効果を検討して,抗癌剤と両薬剤の投与に最も効果的なプロトコールを決める.その後,マウス骨肉腫モデルを用いて,抗癌剤,バルプロン酸とヒドララジン,IL18の術前投与によって,術後の肺転移の抑制効果をin vivoで検証する.これによって,骨肉腫に対する新たな術前化学療法を開発する.
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